古のNIKKORレンズをオマージュした新品金属鏡筒MFレンズが登場しました。MR.DINGから発売されたNoxlux DG 50mm F1.2というレンズです。ノクスルクスと読みます。こちらのレンズを1ヶ月使ってきましたので魅力も癖も正直にレビューしようと思います。
※この記事は2ndfocusの提供でお送りします。
まるで往年のNIKKOR。
Nikon Zfに装着しました。古いNIKKORレンズを愛用してきた人にはクリティカルヒットするデザインではないでしょうか?フォーカスリングのローレットを含めオール金属鏡筒で高級感があります。レンズ重量は475gとやや重いです。Zfに取り付けた場合は1.2Kg弱となります。スナップ撮影はこのセットだけで徘徊したいものです。

レンズ構成は6群8枚。そのうちランタニドガラス4枚・高屈折レンズ1枚という贅沢ぶりです。ランタンガラスはNIKKORレンズの歴史の中でも登場します。Noxluxのオマージュがデザインだけではないことが伺えます。最短撮影距離は45cm。標準域の大口径単焦点レンズではまずまずではないでしょうか。フィルター径もNIKKOR定番の52mm。こだわりを感じますね。

実際に使ってみて描写を一言で表現するなら「これはオールドレンズだねぇ」とニヤニヤが止まらなくなる写らなさが印象に残っています。収差はF5.6あたりまで絞っても残っているような感じ。しかし嫌な気持ちにはならないから不思議です。超高解像に飽きてしまった現代人にはこれくらいボヤッと写るあたりが落とし所かもしれません。

ハイライトが粘らない・パープルフリンジが出る・球面収差もある、このあたりはお家芸ですので愛嬌として受け入れたいと思います。絞ると若干良くなりますが「F5.6で劇的に良くなる!」みたいなインパクトはないので、むしろ写らないことを逆手にとってRAWを弄ってコテコテにフィルムライクな現像をしてみたいなと思っています。この検証は来月の一日一撮のお題にしましょう。

感心したのは歪曲収差です。厳密に真っ直ぐな壁ではありませんが、これを見る限り光学的に歪曲が出ないような設計になっていそうですね。歪曲を抑えつつ大口径を実現するとは、MR.DING やりますね!

レンズの建て付けもよく、フォーカスリングのトルク感も品があります。回転角は170度くらいで、どちらかというと軽めです。スナップ撮影で重宝しました。YouTubeで開封直後のスナップの様子を収録しています。ご参照ください。
弱点が3つ。
完璧なレンズなんてこの世にありません。Noxluxの弱点を3つ取り上げましょう。まず(1)開放時のフレアの出方が独特です。キレイに丸くならずに間が割れているようなフレアが頻繁に出ます。内部反射の構造上の問題だと思いますが、撮影者はコントロールできないのでヤキモキします。

次に(2)電子接点が備わっているレンズなのに絞り値がカメラ側に伝わりません。シャッタースピードやISO感度、レンズ名などはExifの中に記録されますがF値だけは(なにもしなければ)Nullとなります。ちょっとショック。これの対策としてNikon Zfの場合、レンズ情報手動設定の中の記録用絞り値の設定をONにしてコマンドダイヤルでF値を指定することでExifにF値を記録することができるようになります。ただしレンズの実絞りと記録用の絞り値を常に合わせておく必要があります。下記の動画をご参照下さい。
(3)本家NIKKORとフォーカスリング・絞りリングの回転方向がNoxluxは逆です。慣れの問題ではありますが、時間の重みは絶大なんですよね。車で例えるならアクセルとブレーキが逆になったような具合です。頭で理解していても体が反応してしまいますから一朝一夕ではどうにもなりません。生産工場のラインの都合で簡単に逆仕様のヘリコイドを作れないことは容易に想像できますが、NIKKORファンとしては歯痒い思いです。

ただ…これらの弱点に目を瞑ればエモ散らかした古めの描写を堪能できるわけです。ここは1つ我慢を覚えて、しばらくは体に馴染ませていくことに注力します。
どんな人におすすめか?
私はデジタルになって写真を始めた人間ですが、近所のカメヲタおじいちゃんの影響でオールドレンズの沼にもドップリ浸かってしまいました。特にNIKKORレンズには愛着もあります。このブログを伸ばしてくれたのも初期のオールドレンズ記事でした。かつてのNikon使いの皆さんにNoxluxの魅力を伝えていきたいです。さぁミラーレスに乗り換えませんか?(大ごと)

MR.DINGはNikonとライセンス契約を交わしている企業ではありません。絞り値の件も含めしっかりした挙動を求めるならCOSINAのフォクトレンダーという選択肢もあるでしょう。しかしNIKKORオマージュのデザインは現状MR.DINGだけの一点突破です。もぅ本家のNikonがリメイクすればいいのにねッ!(それを言っちゃぁおしまいよ) よってNIKKORのデザインに魅力を感じる人にはおしなべてオススメしたいレンズです。

さて、このNoxluxに関してはまだまだレビューを続けます。一日一撮企画にも持ち込んでがっつり使った上で長期レビューも記事にしますのでお楽しみに。最近、ガチのフィルムエミュレーションプラグインを使う機会に恵まれましたので、いなたいレンズと本場のプラグインの掛け算を試してみたいと思います。嗚呼、また一歩沼が深くなった気がします。かしこ。
ブログ管理人:isofss(イソフス)