この記事はYouTube版の撮影後に書いています。冷静になってブログ用の写真を精査したところ…あんなに怒らなくてもよかったな…と猛省している次第です。そんな訳でここにVoigtlander NOKTON D35mm F1.2の登山写真記事を綴ります。

D35mmの弱点。

九州本土で1番高い山、九重連山の中岳を目指して牧ノ戸峠を出発します。ご来光登山ということでAM3:00スタートとなりました。家を出たのは0:00でしたから今日は徹夜です。もう若くはないんですけどね!

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例1、開放F1.2で満天の星空撮影。

特段調べて行ったわけではなかったのですが、たまたま月が出ないタイミングだったので(しかも晴天でして)満天の星空でした!正直な話、広角レンズを持って行けばよかったです。なおNOKTON D35mm F1.2の開放描写はコマ収差周辺減光が酷いので星空撮影には向いていません。

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例2、開放F1.2で夜明け前のマジックアワーを撮影。

NOKTON D35mm F1.2は元々APS-C用レンズです。これは弱点というよりメリットだと考えています。今回はフルサイズ機のZ9に装着して撮影しています。当然クロップされる訳ですがそれでも2000万画素近くありますし、RAW現像後の出力サイズは(私の場合は)1300万画素程度、さらにブログ用のリサイズで写真は65万画素まで小さくなります。これでいいのです。

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例3、マジックアワーで反射した池のリフレクション。

大きくプリントしないのであれはフルサイズ機にAPS-C用レンズを装着することもありだなと思いました。その分、機材重量を削れる恩恵に預かりましょう。(話が逸れますが、Lサイズのプリントであれば200万画素もいらず、A4でも900万画素あれば必要十分ということですからカメラの進化はここらで止まっていいのでは?と訝るばかりです。)

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例4、開放F1.2で撮影する風景写真。周辺減光と柔らかい描写が特徴。

話を戻します。無限遠にピントを合わせたつもりでしたが恐らくオーバーインフ域までリングが回ってしまったのでしょう…小さなレンズを手袋越しに操作したことが原因と思われます。そもそも無限遠でピントが固定できない構造に対して行き場のない怒りをぶつけた話はYouTube版で…。

デメリット関連でもう1つ。このレンズ、絞りリングも結構ユルいです。クリック感はありますがスルスル動きます。↓この写真はF11のつもりでしたがF13になっていました。絞りは1/3段刻みで動きます。

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例5、F13でご来光撮影。絞り環が緩いのでズレてしまった感じがする。

D35mmの名誉のために補足しますと、このレンズは温度変化でピント位置が変わる異常分散ガラスを採用しているためあえてオーバーインフになる設計のようです。コシナ公式HPのよくある質問コーナーにその旨の記載がありました。その特殊なガラスのおかげで描写力が向上しているのであれば文句を言うのは筋違いでしょう。

D35mmの魅力。

さ、反撃の狼煙を上げますよ。NOKTON D35mm F1.2の魅力を綴ります。というかこれは写真を見ていただくのがよろしいかと。まず開放F1.2で逆光気味に構えると虹色のゴーストが出ます!これはエモい。そもそも開放のフワフワした描写と合わさってかなりいい感じの絵になります。

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例6。開放F1.2では盛大な虹色のゴーストが発生。これはエモい。

そして、結構寄れるんですこのレンズ。最短撮影距離は30cm。最大撮影倍率は換算0.22倍です。大口径の標準レンズで0.2倍を超えるレンズというのは魅力的だと思うのです。欲を言えば0.3倍くらいあると嬉しいのですが(そんな無茶な!)。

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例7。実はこのレンズ、寄れます。最短撮影距離30cm。

もう1つ、絞るとシャキッと描写が締まります。個人的には開放F1.2のゆるさF5.6以降の堅実さで使い分けていました。↓この写真はF8です。

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例8。F8まで絞るとここまでシャッキリ!岩場のゴリゴリ感が伝わってくる。

↓F5.6とF1.2の違いを比較してみましょう。周辺減光と写りの固さに違いを感じます。またF1.2の後ボケも(ザワザワしそうな背景ですが)比較的安全な溶け方に思えます。こういった二面性を楽しめつつ、チープさは感じないというところが魅力です。

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例9。F1.2とF5.6でこれだけボケ感が異なる!

あと、なんといっても軽いです。230gです。軽いは正義!登山なら尚更です。堅牢性と操作性で妥協したくなかったのでボディはZ9を選びましたが、レンズが軽いのでプラマイ0としましょう。単焦点1本で撮り歩く山もなかなか粋なもんです。

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例10。換算52.5mmという万能画角よ。

撮影が楽しくて時間が押してしまいました。今回5人での行動でしたが私が1番遅かったです。カメラ小僧あるあるですね…。だって楽しいんだもん。

一長一短をどう見るか?

難しいところです。きっと完璧なレンズなんて存在しないのですから。NOKTON D35mm F1.2にもその理は当てはまるでしょう。新品で買えるオールドレンズライクなMFレンズ、しかも電子接点があるのでボディ内手ぶれ補正とも協調できてExifデータも残せます。ただ…オーバーインフ構造ですが。

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例11。前ボケは少しグルグルしているような気がする。

残念な情報をもう1つ。これはZ9(ファームウェア4.1)とNOKTON D35mm F1.2の組み合わせで登山中に確認した事象なのですが、Z9側のBluetooth自動接続をONに設定した状態でFnボタンや動画RECボタンの反応遅延(動作まで2〜3秒)が散見されました。本体電源をONにした直後のボタン反応が遅れます。シャッターチャンスにピント拡大しようとして待たされる…という具合です。Bluetoothを切ると解消されます。直接の原因は分かりません。山頂付近が4℃前後だったので温度の問題かな?とも思いましたが地上に帰ってきても再現できたのでファームウェアとの相性かもしれません(※個人の感想です)。ライセンス認可されているとはいえサードパーティ製のレンズなので致し方ないことだと甘受しています。

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例12、開放F1.2ではパープルフリンジが出ます。

開放時のパープルフリンジはご愛嬌ということで。きっと純正現行レンズだと許されないでしょう。技術の進歩ってある意味怖いですね。D35mmを使っていると寛容になることの大切さを学べます。

Z9 +NOKTON D35mm F1.2作例13。これだけ小さなレンズなのに描写は非常に丹精。素晴らしい。

いかがだったでしょうか。この記事の内容がVoigtlander NOKTON D35mm F1.2を検討されていらっしゃる方のお役に立てば幸いです。もう既に買ってしまった方は…なんと言いますか…お、お察し申し上げますッ、私も一蓮托生です!

個人的には写りが好きなだけにオーバーインフの件が悔やまれる限りでして、今後別の機材が欲しくなった時のドナドナ候補にならないかと危惧しています。こういう煩悩を捨て去らない限り財布はずっとスカスカのままだと思います。お気を確かにッ!! では皆さん、また次の沼でお会いしましょう。

ブログ管理人:isofss(イソフス)