中判フィルムカメラ用のレンズをデジタル一眼に装着して写真を撮る!…「僕たちはどうしてこんなところまで来てしまったんだろう」と言ったガンダムSEED最終回のキラの気持ちがよく分かります。そんなことより写真をご査収下さい。

Hasselblad用Planar C80mm F2.8をマウントアダプター経由でNikon D60に取り付けた外観写真。
さぁ行くぞ!

長所と弱点。

使っているカメラは2008年発売開始の初心者向け一眼レフNikon D60。そこにマウントアダプターを介して中判フィルムカメラHasselblad用レンズPlanar C80mm F2.8(銀鏡筒)を取り付けます。以下の写真は全てJPEG撮って出しです。

Planar C80mm F2.8とNikon D60をマウントアダプター経由で繋げて撮影した最初のカットがこれ。建物のガラスの水色が鮮やかで驚いた。

これがファーストカットでした。なんてエモい発色なんだ!青色をオーバー気味に撮影するとエモくなるのはD60側の特徴ではあるのですが、レンズの柔らかな描写と相まって唯一無二感が醸し出されております。これJPEG撮って出しのNO加工です。

こちらも建物のガラスが印象的な一枚。この色味はおそらくD60由来のものだと思う。美しい。

カメラ側がAPS-C機なのでレンズの中央だけをクロップして使うことになります。焦点距離は換算120mmあたり。スナップで使うには切り抜き要素が強くて難易度は高めでした。もっと人の写し込みが欲しいところ。

Planar C80mm F2.8とD60で夏の青空を撮影すると気持ちがいい。煙突の向こうに爽やかな青空が広がる写真。

APS-C機とはいえマウントアダプターを必要とする分、全体のサイズ感は大きくなりがち。毎日持ち歩くにはちょっと重いかな…と言った具合。peak designの3Lのスリングバッグにちょうど収納できる容量でした。

Planar C80mm F2.8の弱点1。逆光に弱い。あまり美しくないフレアが出る。古いレンズなのでしょうがないけど。

重量よりもストレスになったのはフォーカスリングの挙動でした。年代物の中古レンズですから多少の難は仕方ありません。私の主観になりますが回転が若干重いのです。これがPlanar的には普通なのかもしれませんが、重いので指に力がかかります→動き出すとギュンと回り→つまりフォーカスの微調整が苦行なのです…。

Planar C80mm F2.8の弱点2。フォーカスリングが渋い。個体差かもしれないがイライラしてしょうがない!

また通常の一眼レンズに比べてPlanar C80mm F2.8の回転角はかなり広く、最短撮影距離90cmから無限遠までなんと270°もあります。これらの2要素が絡まって、スナップ撮影で肝となる中距離の細かなフォーカシングが困難を極めました。↑この猫さんのように動かない被写体であれば、カメラを持った自分自身を前後させながら複数枚シャッターを切ることでアタリをつけられるのですが。

Planar C80mm F2.8のピント合わせは難しいが、ちょっとピンボケした交差点がなんか懐かしい印象に見える。

このフォーカシング問題は本家のHasselblad 500C/Mに装着している時には気になりませんでした。なぜか?「坊やださから」……違う違う!

Planar C80mm F2.8の弱点3。一眼カメラにつけた時に望遠になるので開放F2.8では正直暗いと思う。手ブレが心配。

Hasselbladはその形状からフォーカシング担当を右手(利き手)にすることも可能です。おそらく今まで利き手のパワーで賄えていたのでしょう。力 is パワーです。ところが一眼カメラに装着するとフォーカシングは左手限定となり、弱い力で広い回転角に対応することになりストレスを感じた…という顛末なのかと。個人的な都合ですが。

D60版のYouTube動画はこちらです。

APS-Cの一眼レフで使う。

出てくる色は唯一無二。しかし撮影体験は修行そのもの。かなり尖った機材構成となりました。さらに欲を掻けばカメラ側のファインダーがもう少し大きければピント合わせが楽になるのにな…という贅沢をお許し下さい。これは小型のAPS-C機の宿命ですよね。

Planar C80mm F2.8で街スナップ。磨りガラスの向こうにサラリーマン達が歩いている。

ここだけの話、浮気心から視野率100%のペタプリズム上位互換ボディを探してしまいました。あるじゃないですかPENTAX KFが!実際にヨドバシカメラに実機を触りにも行きました。(1)現行品なのにUSB-C非採用であったこと、(2)グリップがD60よりキツかったこと、(3)レンズ集めが0からスタートになること、この3点で見送りましたが他の要素はすこぶる魅力的でした。危なかった!

カフェの入口に座る人形。Planar C80mm F2.8の街スナップサンプル。

Planar C80mm F2.8とD60の組み合わせの話に戻りますと、このご時世に、一眼レフAPS-C機で換算120mm画角を使えるのはもはや稀有な体験ですね。D60は古いカメラなので二束三文で買えますし、ハッセル用のマウントアダプターも6000円程度です。ただ化石Planarがそこそこのお値段なので両手を上げてお勧めはできないのが玉に瑕。そのお金があれば現行品のイケてる単焦点レンズ買えますから。

Planar C80mm F2.8を使って被写体流しのスナップ。お寺の前の道路をバイクが横切っている。

思い返せば中判フィルムカメラ一式を買う時点であわよくばこのPlanarが一生モノの資産になるのでは?という下心はありました。フォーカス重々問題を解決すればその希望も叶いそうです。専門業者によるメンテナンスは納期が半年待ちとのこと。むむむ…その期間に写真が撮れなくなるのは痛いです。

Planar C80mm F2.8(初期型銀鏡筒)は古いレンズなのにたまにドキッとする描写をしてくれる。夕陽に照らされた木を撮影。

Hasselbladボディで使うのが本命ですので、まずは手持ちのフィルムを使い切ることを目下の目標にしようと思います。メンテナンスはその後かしら。

フルサイズのミラーレスカメラで使う。

先ほど「ファインダーが大きければ」と言っていたアレ、試してみました。D60に繋げた時点でFマウントになっていますので、それをZマウントに変換するアダプターを介してミラーレスカメラのZ9に装着しました。視野率100%・しかも撮る前に露出結果が見えます!最高です。

Z9とPlanar C80mm F2.8で田園風景を撮影。自転車に乗っている子供が写っている。

焦点距離は本来の換算80mmに戻ります。いや〜これくらいがちょうどいい!

Planar C80mm F2.8をフルサイズ画角で使っている。田舎の商店街のたばこやさんをZ9で撮影。
開放F2.8

それにしてもよく写りますね。D60の時より解像感が増しているのはひとえにピントが合っているからでしょうね。ミラーレスカメラなので撮影前にピント面の拡大で追い込みが可能です。Z9にはMF時の半押し拡大解除も実装されているのでユーザビリティはすこぶる良好!

河辺の石をZ9とPlanar C80mm F2.8で撮影。ミラーレスカメラは結果が先にわかるので便利だ。

ただしZ9そのものが重くてデカいことと、マウントアダプターをダブルで噛ませた見た目の悪さがデメリットでした。カメラ界隈の鉄則トレードオフの原則から逃れることはできないようです…。

画面いっぱいに広がる田んぼの稲。Z9とPlanar C80mm F2.8で田舎スナップ。
F5.6

絞っても周辺減光が若干あるようです。この写真はブログ用にリサイズしているのですが、高画素で保存した元データは端っこの稲までよく解像していました。嗚呼、早くメンテナンスに出して一生物レンズにしたいなぁ。

機関車を見ている親子の写真。Z9とPlanar C80mm F2.8で撮影。ちょっとピンボケしているがよしとしよう。

密かに楽しみにしているのは(執筆時点ではまだ展開されていない)Nikonのイメージングレシピがボディ側にファームアップされることです!元々のレンズの個性にボディ側の色捻りを掛け算するとどんな表現になるのでしょうか?絶対楽しいはず。すでに使ってみたいレシピは保存済です。ファームアップ待ちですNikonさん早よ!

Z9とPlanarでスナップした田舎うろうろSNAP動画もありますのでよかったら是非。いろんな組み合わせで機材沼を彷徨っていますが、終着駅は一体どこにあるのやら…。まだ旅は続きそうです。ではまた次の沼でお会いしましょう。

ブログ管理人:isofss(イソフス)