国産初のズームレンズとして歴史に名を刻んだ通称ヨンサンパーロクことZoom NIKKOR 43-86mm F3.5。このレンズを1ヶ月間ぶっ通しで毎日使ってきましたので写真と共に所感を綴っておきます。相方のボディはNikon D60です。撮影条件はJPEG撮って出し・オートWB・仕上がり設定「標準」となっております。

国産初というロマン。

初代は1963年発売開始とのことですが私の手元にあるヨンサンパーロクはマイナーチェンジ版(おそらく1977年発売開始の第四世代)だと思います。特徴としてはAi化されたこと・初代より40g重くなった450g・光学系が7群9枚から8群11枚に増強されていること等が挙げられます。意匠面ではレンズ鏡筒に刻まれている髭の本数が減っています。

Nikon D60とAi Zoom NIKKOR 43-86mm F3.5の外観写真。

ボディは今回も引き続きNikon D60を使いました。APS-C機ですのでレンズの焦点距離は換算64.5-129mmとなります。中望遠好きにとってはブッ刺さる画角です。弱点は明るさでしょうか。絞りは開放F3.5とやや暗く、基本的に日中屋外用といった印象でした。そもそもD60側が高感度に弱く、気にならないノイズの上限がISO400あたりなので暗いレンズとの相性は悪かったです。

ヨンサンパーロクで雨の日スナップ。描写の傾向は概ね甘い印象。傘をさして歩く人々を撮影。

例えば↑この写真はISO400でシャッタースピード1/100秒です。絞りは(たぶん)F5.6です。(たぶん)の理由は後述します。これ以上シャッタースピードを遅くすると手ブレが心配です。かといって街中で三脚を立てるわけにはいきません。この辺りの弱点は国産初というロマン(精神論)で蓋をしましょう。

弱点もある。

完璧なレンズなどこの世に存在しないのです。ヨンサンパーロクも例外ではなく、特にこのレンズは開放時に全体が滲みます。F3.5のすぐ横にF4のクリック感があり(刻印は無し)、次のF5.6は刻印されています。この辺りで描写が落ち着きます。

ヨンサンパーロクろくは開放F3.5の時に滲んだような収差が目立つ。これを個性と捉えることはできるだろうか?

直線が多いものを撮影すると樽型収差を感じます。APS-C機のD60でこれですからフルサイズ機で元の43-86mm画角になると より歪曲を感じるかも知れません。電子接点は無いので電子的な補正もありません。

ヨンサンパーロクは樽型収差が目立つ。APS-Cクロップでこれなのでフルサイズ画角で使うともっと目立つだろう。

このレンズのようにAi化されている世代のヨンサンパーロクの場合、ボディ側もAi対応していれば(レンズ情報手動設定を入力することで)Exifデータを残したりボディ側で絞りを操作できたりと恩恵は広がります。しかし残念ながらD60はAi非対応ボディでした。

ヨンサンパーロクの換算64.5-129mm画角は切り抜きスナップには非常に相性が良い。

D60に電子接点の無いレンズを装着すると露出計がブランク表示になって使えません。先ほど(たぶん)と言っていたのがこの点です。この時のデメリットは(1)写真の明るさが撮影前には分からないこと、(2)意図せず絞り環がズレてしまっても気づかないこと、そして(3)Exifデータが残らないことです。

ただ中望遠画角に慣れてしまうと広角が苦手になりそうな気がしています。この写真は飛行機以外を切り取った望遠写真。

とはいえMF時のフォーカスエイドは生きていました。ミラー下に鎮座する位相差センサーはレンズ情報を必要としないのでしょうか…。いずれにしてもフォーカスエイドが使えたおかげで裸眼で測距しなくてすみました。

1本持っててもいいかも。

今更ここでヨンサンパーロクを布教しても私にはなんのメリットも発生しませんが、レンズ道楽の寄り道がてら1本所有しておいても損はないレンズだと思いました。なんといっても中古相場が5000円界隈ですから…。一応アフェリエイトリンクですが貼っておきますね(もう売れてるかもしれないけど)。古いレンズなので個人的には中古店で現物を見る方がいいと思います。

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ある程度の圧縮効果を期待できるヨンサンパーロクの風景写真もいいと思います。目の前に大きな山。

価格が抑えられていて、2倍ズームの便利さもあって、比較的コンパクトなサイズです。難癖つければちょっと重いかな。ここは金属鏡筒でずっしり冷んやりした質感とトレードオフになっています。D60のようなプラスチックボディに装着するとかなりフロントヘビーです。

距離指標を見ると最短撮影距離は1.2m付近となっており、寄れるとは言い難いレンズではある。

また最短撮影距離が1.2mとちょっと長めです。APS-C機でクロップして使う場合は↑この写真くらいの距離感になります。寄れるとは言い難いですね。例えば50mm単焦点レンズ(APS-C機で75mm相当)の最短撮影距離45cmと比較するとイメージしやすいでしょうか。

F5.6まで絞っても望遠端かつ寄って撮影することで相応にボケを楽しむこともできる。

みんな大好きボケに関して。望遠端かつ最短撮影距離付近で撮影するとF5.6でも背景は結構ボケます。ボケ味は背景次第だと感じました。シンプルな背景だと↑上の写真のように比較的スッキリしますが、ごちゃごちゃしている場所だとボケもザワザワしていました。

ただ、ここぞというときの換算129mmの切り抜きスナップをこのコンパクトサイズで実現しているのはすごい。橋の上で工事をしている人を撮影。

この凡庸なレンズの特徴をまとめましょう。それは(1)国産で初のズームレンズというロマン。まぁその要素は写真には写りませんが…。(2)失敗してもダメージが少ない価格帯。(3)実用的な2倍ズーム。(4)収差や明るさの弱点を身をもって知れることです。このデメリットをカバーできるレンズを中古沼で探し始めるまでが1セットです。お気を確かにッ!

あとは比較的離れた場所から人間が写るスナップ写真を撮影しても相手に威圧感を与えなくて済む効果もある。

そしてこの限界を知ることは機材沼生活の土台みたいなものですから、「国産初」がなんたるかを一度体感しておくことは今後の人生の糧になるでしょう、知らんけど。

グリップが大きいボディに装着すれば取り回しも良くなりました。本来のフルサイズ画角で楽しむとまた変わった印象になったかもしれません。

ちなみにグリップの大きなボディに装着したら重心が安定しました。実際には重くなっていますがD60よりストレスが減ったから不思議です。絵に関してはフルサイズ画角で使ったらまた別の感想が生まれるんでしょうね。

Nikon D4sとAi Zoom NIKKOR 43-86mm F3.5の外観写真。
D4sとの組み合わせ。

準広角の43mmから中望遠の86mmまでをカバーする2倍ズームですか。いいですね。…ん?よくよく考えると似たような現代版ありましたね。確かPanasonicは20-60mmってありましたよね。そういえばNikon Z用の24-50mmを使ったことがありました(汗)。まだ喋らない時代のisofss動画でよければこちらの記事の最後に24-50mmの動画がございます…レアかも。

こちらは今回の本編動画です。

あれから3年…沼の深層に足を進めてしまった成れ果て動画を今週も投稿しております。さて月が変わりましたので一日一撮装備もチェンジです!進捗はまた改めて。ではまた次の沼でお会いしましょう。

ブログ管理人:isofss(イソフス)