転売ヤーが最も嫌がること。それは在庫を抱えることです。彼らはリスクを冒しながら仕入れと販売を繰り返しています。薄利多売で積み重ねた利益を次の仕入れに回しながら自転車操業をしているのが常です。つまり彼らにとって最も嫌なことはその流れが止まること = 在庫を抱えることなのです。興味を持たれた方はこの先にお進み下さい。

現役転売ヤーに聞いた話。

つい先頃、プライベートで現役転売ヤーに直接話を伺う機会がありました。もしかしたらあなたの近くにもいるかもしれません。転売ヤーと聞くと外国人のイメージがありますよね。見た目もモラルも含めて、小銭に群がるそのはしたなさが嫌われる要因でしょう。しかし、話を聞いてみると我々がイメージする転売ヤーとは実情は少し剥離している印象を持ちました。日本人もいます。お金持ちがギャンブル感覚でやっている、そんな印象でした。(1)そもそも仕入れを行える一定の経済力が必要で、(2)流行りを当てる賢さも求められ、(3)仕入れ・在庫置き場・発送などの仕組み作り、(4)税務署対策、(5)いわゆるモラルを一切気にしない図太さ…等々、我々がイメージするよだれを撒き散らしながら新製品に群がるカタコト転売ヤーとは似ても似つかない狡猾さを感じました。そして最大の特徴は (6) 立ち止まれないこと。「毎日活動しないと意味がない」と言っていました。(専業ではなく副業でもそうらしいです)

これはおそらく精神的な要因でしょう。今までの活動で得た利益を次の仕入れに回す。そこで少しづつ利益幅を大きくする。仕入れの量や価格を増やす。利益を大きくする。エンドレスです。ギャンブルで勝っている時のような高揚感なのかな?と感じました。…だとしたら止められないでしょうね。話を聞いている最中にも購入の通知がポンポン鳴っていました。

この記事の冒頭に載せている写真のエピソードもあります。話を聞いていた時にフラッと立ち寄ったコンビニにポケモンカードがたまたま売っていたのです。購入制限の注意書きがありましたがもちろん無視。レジスタッフは外国人留学生ですから押し切れます。全部買っていました。すごい精神力です。すると…たまたま激レアカードが引き当てられたのです。私はポケモンカードのことは詳しくありませんが、仕入れの300倍の価値?らしいです。

いつものカメラ趣味とはジャンル違いではありましたが、転売ヤーの実態を身近なところで目の当たりにしてなんとも複雑な気持ちになりました。

販売側の姿勢。

需要(人気)があるのに商品の絶対数が少ない。→これは価値が上がりますね。経済の基本的原則です。転売が悪か善かという話は置いておいて、誰もがスマートフォンとアプリを手にした環境が今は整っており、SNSを通じて購入意欲を高める仕組みも整っている今の時代、数が少ない商品ほど転売が起るのは必然です。例えばポケモンカードの日本限定カードは世界的に人気が高いそうです。メルカリで出品者からポケカを買っているのは海外に売り捌くバイヤーだとか。だから売れるんですね。需要が常にあるから。

これを仕掛けた販売側は意図的にそうしているのでしょう。相当賢いです。ポケカなんて原材料 なのに。

賢いと思ったもう1つの要素は、ポケモンカードの場合、親子で楽しめるエンターテイメントの体裁が根底にあることです。親もかつてのポケモン世代。家族で楽める健全な娯楽。(あと実はちょっと美味しい話があることを知っているのは大人だけ)。しかも転売のヘイトは外国人に向きます。「酷いよねぇ、○国人がハッピーセット爆買いしてるなんて子供が可哀想…」そう言っている親が転売ヤーかもしれませんよ。それも含めて販売側の戦略だと思います(※個人の感想です)。資本主義は 勝てば官軍です。

カメラ界隈はどうか?

カメラメーカーの中にも意図的に製品の流通量を減らして自社製品の価値を押し上げていく動きが散見されます。成熟し切った市場で生き残るための選択なのでしょう。例えばライカになりたいFUJIFILM。リコー GR3も一時期品薄が続いていましたね。ユーザー側からすれば「欲しい時に買えないメーカー・転売対策してくれないメーカー」…という認知が広がったあたり、これは販売側の思惑ではないはずです。FUJIFILMのTシャツなんかもうXのネタには格好の的ですし。

話が少し逸れますが、メーカー側がなすすべもなく手をこまねいてしまったケースとしてはSONYのPS5 転売騒動が思い出されます。あの頃の需要高騰など 誰が予測出来たでしょうか。しかし転売の土壌は既に完成していました。需要が高まれば転売は起きる、いい例です。時を経て今年の任天堂 Switch 2ように徹底した転売対策で売上と評判を両立した企業もあります。

転売は経済活動の一種という目線でものを見ると、販売側の姿勢で ある程度は転売をコントロールできるはずなんですよね。これはユーザーに届けたいと願うのか?あるいはどんな手段を使っても売ると考えているのか?非常に分かりやすい指標になっていると思いますし、SNS時代のブランディングでこれらを両立しているポケモンカードほどの戦略を持ったカメラメーカーはLeica以外には存在し得ないでしょう。カメラの性能が頭打ちになっている昨今、メーカーの売り方売り方の魅せ方は今後の命運を分けることになると思います。私などが言わなくとも各社マーケ部には戦略があるでしょうし、各社違うから買い手側は面白く選べるわけですが。

転売ヤーを困らせたいなら。

蛇行しまくったこれらの話を束ねてみます。1つの答えに辿り着きました。

(要素1) 我々は転売ヤーが嫌いです。綺麗事はトイレと一緒に流しましょう。ここまで記事をお読み頂いたあなたは、心のどこかで転売ヤーを忌避している善良な市民か・野次馬でここまで読み進めてしまった転売ヤーご本人かどちらかでしょう。そしてスマホとプラットフォームを手にした人類から (要素2) 転売を取り除くことは出来ません。つまりこの憎悪の螺旋はこれからも続くのです。モラルなど資本主義の前では絵に描いた餅です。昔、偉い人が言っていました…

「これが人の夢! 人の望み! 人の業!他者より強く、他者より先へ、他者より上へ! 競い、妬み、憎んで、その身を食い合う!」

しかし当の転売ヤーは (要素3) 在庫を抱えることを恐れています。←ここです。憎き転売ヤーに自分の正義の鉄槌を・その拳をフルスイングで振り下ろしたいのであれば

転売ヤーから買わないことです。

メルカリだけではありません。Amazonだって油断なりません。購入前に必ず販売店を確認しましょうね!(アフィカス失礼)

我々が転売ヤーから購入しないと転売ヤーは困ります。しかも最近のカメラ機材は高単価ですからダメージは絶大です。彼らはのたうち回るでしょう。今話題になっているGR4の転売だって転売ヤーの取り分は5000円程度です。その利鞘を掠め取るために20万円近いリスクを背負っているのです。聞こえますか?転売ヤーの鼻息が?彼らは1秒でも早く売り捌きたいのです。SNSで購入報告が上がっている今のうちに!YouTuberがファーストインプレッションを上げている今のうちにッ!メーカー生産が追いついていない今のうちに「買わなければ!」と思っている盲目の子羊ちゃんの財布から数万円巻き上げてそのうちの5000円のキックバックを受けたいのです。

25万という値付けもありました。これは転売ヤーから買う無在庫転売ヤーかもしれません。最安値の22万円付近で仕入れて25万で売り、手数料と送料が26000円だったとすると4000円の利益です。自宅付近にコンビニがあれば労力ほぼ0。こんな連中から買いますか?

待て待て。

急いで買ったところでドーパミンの効果は一晩で切れます。その一瞬の快楽のために20万の製品を23万とか25万で買うんですか?……で、でもそんなこと言ったら新製品が手に入らないのではありませんか?

大丈夫、別に死にませんから。

数ヶ月遅れるだけです。当ブログはカメラ機材ジャンルを扱っておりますのでカメラで例えましょう。別のその機材が今なくたって写真は撮れますよね?新製品が今すぐ手元になくて困ることって、ありますか?

でも待っていたら待っている間に下取り価格が下がる? 寝言は寝ていってくださいね。転売ヤーだってリスクを抱えているんです。あなたがノーリスクなのに転売ヤーだけ滅びるなんて都合のいい話はないです。「悲しいけど、これ戦争なのよね。」

確かに、欲しい商品が手元に届くタイミングは遅くなるかもしれません。しかし、正規ルートからきちんと購入することで自分のお金が推しのメーカーにきちんと渡り、転売ヤーも在庫を抱え(彼らもある意味で推しメーカーにお布施をしたことになり)、潤ったメーカーが次の開発に取り掛かれる。旨みがないと悟った転売ヤーは去っていく。これは素晴らしい循環です。

転売ヤーから買ってレビューしているYouTuberもいるよね? → います。しかし彼らも自転車操業です。再生数を稼ぎ、そこからコアなファンを作り、自社サービスのダイレクト課金に繋げていく生存戦略のための転売購入(つまり仕入れ)なのです。レビューが終わったらすぐにまた転売します。彼らにとっての転売は息をするのと同じくらい普通の経済行動です。彼らが尊重するのはあなたのモラルの基準ではなく視聴者の財布です。イライラするだけ損なので忘れましょう。

本当に大切なことは、機材を買った後にその道具を使って自分は何をしたいのか?だと思います。その目的がはっきりしているほど、お目当ての製品が実際に届くまでの待ち遠しい時間すら瞬く間に過ぎてゆくことでしょう。まるで遠距離恋愛中の恋人のように。「今すぐ欲しい」は幻想です。買い物で人は幸せにはなれないことは歴史が証明しています。(じゃあなんでお前はYouTuberをやっているのだ!?…という美しいブーメランよ)

キラキラしたSNSやインフルエンサーたちの褒めちぎる案件や絶え間なく押し寄せる広告の海で溺れないように、その曇りなき眼で見定めていきましょう。ではいつもの合言葉をご唱和下さい。

買い物は、買う前が、一番楽しい!

繰り返しになりますが転売ヤーを凋落させる最も効果的な方法は奴らから買わないことです。お忘れなく。

機材系YouTuber isofss(イソフス)