靴の中の小石とか、少しだけ開いている襖とか、色が揃わないまま並んでいるフェイスタオルとか、そういうのが苦手な私はカメラ選びにおいても些細な妥協が許せなかったのはなぜか?坊やだからさ。散財しながらカメラを乗り換え続け16台目にしてNikonのフラッグシップ機Z9を予約注文。1週間経った今、心を落ち着かせて事の顛末を綴っておこうと思う。

着眼点による。

カメラは写真や動画を撮影することのできる道具である。良い道具を所有し・使用し・何がしかを作りだす喜びはひとしおである。では十把一絡げにどんな道具であっても構わないか?と問われれば、そうではない。その道具がどれほど有用なのか?改善点があるのか?これは使い手(持ち主)のものさし次第で変わるだろう。

厄介なのは、趣味の世界になる程そこに感情が加わることだ。「所有欲」とか「ロマン」とでも言い換えようか。もちろん一義的に道具であることには変わらないが所有物にもなる延長戦を鑑みると沼は深い。もちろんカメラなんてあってもなくても生きていくことになんら影響はしない。別にカメラなんてスマホでいいじゃんと言われがちでもある。しかし人によっては心を奮い立たせ目を輝かせQOLを爆上げしてくれる、それがカメラなのだ。

そう、結局は本人の着眼点次第だ。

と…ここまで前振りを垂れ流したことには理由がある。予約注文したZ9は老舗カメラメーカーNikonのフラッグシップ機。お値段約63万円。よって「頭のおかしな奴がいるもんだな」くらいの前提を作っておかないと理解してもらえない買い物だ。さぁ、以下に度し難い言い訳が続くのだ、読みたまえ!

絶対条件!

SONYがミラーレス一眼を牽引し始めて早10年。老舗のCanonとNikonが追従を始めたのが2018年。精密機器の権化だった一眼レフが衰退の一途をだどる中、カメラはもはや電子機器に変容したと感じるのだ。時を同じくしてスマートフォンの性能も著しく進化し、事ある毎に一眼カメラは対スマホ比として槍玉に上げられるようになった。この流れの中でユーザーが求めるカメラの使いやすさ(ユーザビリティ)も潮目が変わったと私は思う。

USB-Cであることは必須。

ワイヤレス時代に物理ケーブルで唯一存在を許されていると言っても過言ではないUSB-C。天下のAppleでさえ2024年以降はLightningケーブルで膝をつくことになるのだから、実用性や普及率を考えると少なくとも向こう10年くらいはUSB-Cがあまねく電子機器で踏襲されていくであろう。戦いとは常に二手三手先を読んで行うものだ。

だからこそ、カメラ選びにおいてこのUSB-Cケーブルが標準装備されていることはもはや絶対条件だ!写真や動画のデータ転送はさることながらバッテリーの充電・給電も然りである。今時いちいち記録メディアを抜き差ししてPCに取り込むとか…いちいちバッテリーを取り出してチャージャーで充電するとか…時代錯誤も甚だしいと私は思う。冗談ではない!スマホじゃそんなことをしないじゃないか(←ここが基準)。ただそこにUSB-Cがあれば全部解決できるじゃないか。USB-Cを搭載していないカメラなんてカメラじゃない。あえて言おう、カスであると!

蛇足になるが、現行品のカメラに実装されているWi-Fi経由でのデータ転送はお世辞にも快適とは言えない。メーカーによってはRAWデータすら転送できない仕様もあるとかで…極めてご愁傷様である。欲をかけば、MagSafeみたいなステーションにカメラを載せて充電もデータ転送も高速で完結できる!みたいなイノベーションを私は期待している。いっそのことeSIMを内蔵して一眼カメラで「もしもし〜」となる時代は来ないものか?

蓋が開けやすいことも必須。

当ブログで何度も言及してきたことではあるが、カメラ本体のUSBポートにアクセスが容易であることもユーザビリティにおいては超重要事項である。身銭を切って十数台使ってきた中で1番使いやすかった蓋はFUJIFILMのX-E4だった。E4は最近ディスコンになったと噂を聞いたが本当なら残念だ。あれはいいものだ!当時の記事リンクを貼っておこう。

一眼カメラに絶対に必要なUSB-C給電。Z30もX-E4も完備。
左はZ30のゴム蓋。右はX-E4の便利な蓋。

E4のようなパカっと開く蓋の場合、防塵防滴性能は落ちるだろう(むしろ皆無と言っていい)。逆にその性能を上げようとするとNikon Zシリーズに見られるような密着ゴム蓋になる。これはこれでメリットはあるが開閉はしにくくなる。全てはトレードオフだ。

Z9のUSB-Cポートは蓋が開けやすい!かつ防塵防滴に配慮されている。素晴らしい。

ところがZ9だとこの問題を解決できる。軽量になったミラーレスタイプとはいえ重戦車であるZ9のボディ幅は厚い。厚いからこそ蓋周りの構造に余裕がある。↑ご覧頂きたい、ゴム蓋と凹凸形状により防塵防滴性能を維持しながら開閉し易さも担保しているZ9の足回りを。実は同様にフラッグシップである一眼レフD6も似たような構造なのだがUSB-C給電に非対応となっていてZ9に武がある。Z9は伊達じゃない!

ないほどにある。

Less is more. 近代建築の巨匠の言葉だ。日本語では「ないほどにある」と言う。たかだかUSB-Cに異常なほど粘着する理由はここにある。道具は、ストレスを感じないほどに快適である…ということだ。冒頭で「靴の中の小石」云々と曰ったフラグはここで回収しよう。快適であれば気持ちも思考も軽くなる。その余裕が撮影のクオリティに跳ね返ってくる。

この原則はZ9が持つ他の要素にも通じる。例えば起動や動作が爆速であることもそうだ。私のようなオールドタイプの人間でもその機敏さには目を奪われた。さらに言えば目につかない内部も超高速仕様なのが凄い。まるで全身がサイコフレームで構成されているようだ。現状Z9の次に鎮座するZ7iiですら読み出し速度に12倍の差をつけられている。3倍早いシャアでもあれだけの戦果だったのにさらに4倍早いことになる。恐ろしいものだ。この点は実機をヨドバシカメラで触らせてもらって納得した。全てが早かった。この快適性を味わってしまうのは危険だ。慣れてしまえばもう元の世界線には戻れないだろう。ザクとは違うのだよ、ザクとは!

だからと言ってみんなもフラッグシップ機を買おうぜ!と私は考えない。時折そういう情報に接することがあるが(発信者の意図はどうあれ)あれは買えた者の勝利宣言にしか聞こえなかったからだ。気にするな。俺は気にしていない。お前が言ったことも正しい。

この記事ですら自慢話と感じさせてしまったならば申し訳なく思う。じゃあなんで書き認めているかというと殆ど自分への備忘録である。どうせZ9を買ってもカメラ沼は終わらないがその理由は忘れたくない。そういうものだ。悲しいけどコレ、戦争なのよね!どうしてもフラッグシップ機に乗りたくなってしまった人間は遅かれ早かれ結局それに乗るだろう。たまたま起動直前の機体が操作マニュアルと一緒に寝転んでいた…なんて展開は人生のRPGには起き得ない。もちろん購入のハードルは高いがチャンスは最大限に活かす、それが私の主義だ。

お後がよろしいようで(?)。さて肝心の納期はいつになることやら?暫くの間、指を咥えて待つことにしよう。しかし冷静になりすぎるのは良くない。僕たちはどうしてこんなところへ来てしまったんだろう? なんて考え出しては本末転倒だ。たとえそこに答えがなくても進んでいこうじゃないか!

動画版もございます。こちらは真面目動画です。

※初代ガンダムで一貫したかったが最後にSEEDが混ざってしまった点は不徳の致すところだ。誠に遺憾である。

ブログ管理人:isofss(イソフス)