高級トイカメラ instax Pal2 はスマホ世代に向けてのFUJIFILMの囲い込み作戦だと思う。そこに誰が写っているか?記録写真の尊さをキャッチーな入口で教えてくれる恐ろしい撒き餌カメラだ。そして思い出は常にFUJIFILMと共にある仕掛けになっていた。強いフォースが働いている。

チープだが気配り一点突破。

この記事ではスペック云々は羽毛が肌を撫でる程度しか記さないでおこう。トイカメラにスペックを求めるなど下品の極みだろう。トイカメラを謳うにしては豪華な約1000万画素を誇りつつ、液晶モニターも搭載し、アプリとの連動が優秀で、約87gとほぼ空気のようなチープな外装。ここまでは完璧だ。

instax Pal2を正面から見た外観。ファインダー、レンズ、小さな鏡、LEDフラッシュが内蔵。
なお、赤いストラップは100円ショップだ。

記録画素数に対して液晶モニターは約17万画素。お世辞にも使い心地は良くないし、明るい屋外だとほぼ何も見えない。価格を考えると贅沢は言えないので我慢しよう。しかし撮影中に「あんまり綺麗じゃないな」と感じても帰って大きな画面で写真を写したら「思ったより綺麗だ!」と感動することがしばしばある。ストレスを感じていたはずなのに、ちょっとお得な気分になる。instax Pal2はこういう想定外なベネフィットに富んでいる。設計者の人柄が出ているとでも言おうか。正面左側の自撮り用ミラーもそうだ。とても気の利いた配慮だ。

instax Pal2を上面から見た軍幹部。液晶モニター、巻き上げレバー、エフェクト切り替えダイヤル。

左ダイヤルにはエフェクト変更が割り当てられている。ジョイスティックのようなレバーは思ったよりしっかり操作感がある。右の巻き上げレバーはきちんとフィルム機っぽい巻き上げの触感があるし、レバーの部分はLEDの窓になっている。細かいところにお値段相応の良心が宿っていて気持ちがいいガジェットだ。

instax Pal2を背面から見た外観。ファインダー、裏蓋を外したところにMicroSDの差し込み口。

ウエストレベルファインダーの特性上、縦写真や下向きのアングルには物理的な不便さがつきまとうが、そんな時は素通しファインダーを使うとよい。覗くと真ん中に中心マークも備わっている。設計者がなぜそこにその機能を搭載したのか?を考えさせてくれる仕掛けがとても心地よいのだ。

底面は自分でスキンシールを当てがってみた。傷防止になっていて安心だ。

底面をDIYしてみた。他のミラーレスカメラで使っていたスキンシールの余り物を切って貼り付けただけなので一見ガタガタだが、遠目で見ると一体感があっていい感じだ。(撮影するのを忘れたが、机に置いたときに角度をつけることができる樹脂製のフードも気が利いていた)

スマホとセットな設計。

写真を撮り始めてまもないが、強烈に感じたことが1つある。この instax Pal2 はスマホアプリ前提で設計されているのだろう。つまりスマホ写真を普段から盛っている現役世代に向けたトイカメラだと強く感じた。加工ありきのカメラと言っていい。

instax Pal2 のアプリ画面。極めてスマホ的でRAW現像とは全く異なる性質を持つ。
アプリがそのままギャラリーになる。うまいマーケティングだ。

それを感じたのが専用アプリ INSTAX Pal なのだが、そのユーザーインターフェイスはスマホアプリそのもので、所謂RAW現像ソフトみたいな小難しさとは無縁なキラキラ仕様だった。こだわりが強過ぎるカメラおじさんのことなど1mmも配慮されていない若者仕様がとても潔かった。

instax Pal2 作例。夜の街スナップをinstaxの額に入れて、さらに背景色を黄色に設定して書き出した写真。
スマホ鑑賞用に特化されたアプリ。

アプリ経由で写真を転送する場合、どのフォーマットで撮影していてもアプリ側で元のフォーマットから枠を選び直せるのは興味深い。しかしエフェクトは変えられない。色やトーンの編集はお湯を水で薄めた程度しかできず、90°の角度調整もできないし、水平出しトリミングの調整幅がガバガバ過ぎて使えたものではない。そう、これはRAW現像ソフトではないのだ。加工アプリなのだ!

instax Pal2 作例。バスを撮影。それをinstaxの枠に入れて、背景を写真の透過タイプにしてみた。
背景色の選択肢も今の時代っぽい。

ここで気づく。FUJIFILMは 一眼カメラに興味はないがスマホとは違う写真を撮りたい若い世代(社会人)をターゲットにしているのだ…と。公式PRの登場人物たちがまさにそうだ。はっきり言うと、おじさんむけのスナップカメラでは断じてない。Xシリーズを買っておけ。

instax Pal2 作例。夜スナップを枠なしで元フレームのまま背景色をつけてみた。
このままInstagramに貼れそう!

孤独な趣味おじさんが黙々と日常風景をスナップするためのカメラではないと思う(もちろんそうするのは自由だし、私もその1人ではあるが)、むしろ家族やパートナーや友達と楽しい時間を記録するスマホ以外の撮影体験なのだ!FUJIFILMはそれを可愛いトイカメラと加工アプリのセットで提案しているのだ。

instax Pal2 作例。朝の通勤スナップ。元のフォーマットのまま出力。
もちろん、そのまま出力もできる。

ユーザーがそこで終わるも良し。樹脂ボディかつ一体型バッテリーの instax Pal2 は製品寿命が短いと思う。1年遊べれば御の字だろう。すでに私の instax Pal2 はフードが欠けてしまった。飽きた時、壊れた時、ユーザーの頭にはFUJIFILMの文字と思い出の写真が残る。これは強い。トイカメラの写真は小綺麗なスマホ写真よりも印象に残る。しかも思い出もセットで。

最後にとっておきの魅力を1つご紹介しよう。タイトル回収はここだ。実は、instax Pal2は MicroSDカードを挿さなくても最大100枚まで写真が撮れる。(ファームウェアの更新にはMicroSDが必須なのでどのみち必要にはなるのだが)。そしてこの100枚はアプリに転送すると本体からデータが消える。ここが素晴らしい。シャッター回数に有限性がある。100枚撮ったら転送して記憶が新しいうちにアプリで加工しよう。アプリには写真が溜まっていきギャラリーになる。そこからチェキプリントすることもできるが、チェキを持っていなくてもPal2は写真機だし、スマホは鑑賞モニターなのだ。思い出はすっとFUJIFILMと共にある。よくできた囲い込みだ。

FUJIFILMのターゲットは?

2点だけ製品上の不満を綴っておこう。①隠れUSB-C(オスタイプ)は悪手だと思った。USB-Cを突き出してスマホやタブレットに本体ごと接続したり充電したりするギミックなのだが…がさつな私としてはいずれUSB-Cを折ることになるだろう。結局は付属のUSB-C(メス→オス)ケーブルを使っている。オスである意味がない。(初見で目を引く効果はあったが、それだけだ)

instax Pal2 外観。とにかくよい佇まいだ。
本体左側に隠れUSB-C (↑ちょっと見えてる)

もうひとつは ②バッテリー消耗が非常に早い。これには原因がある。私はこまめに電源を切ったりしない。つけっぱなしで気が向いた時にスナップで使いたいのだ。しかし本体側のスリープは最短で2分設定なのだ。これでは電池が消耗しても仕方がない。instax Pal2を所有している友人(20代)に聞いたところ「逐一電源をOFFにしているからバッテリーは良く保つ」と言っていた。それみたことか!年は取りたくないものだ。

少し前に流行ったコダックのチャーメラをご存知だろうか?実は撮り比べをしてみたのだが、155万画素のチャーメラもなかなかいい仕事をしてくれた。各種カメラとの比較動画も作ったので、instax Pal2 に興味のある方は参照してほしい。

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トイカメラの類は売り切って終わりのプロダクトだろう。消費社会らしくて納得だ。しかし繰り返しになるがトイカメラの写真は強い。そもそもポケットからトイカメラが出てきた時点で友人たちは「なにそれー!」と100%の確率で反応する。その勢いのまま撮影した友達写真に力があるのは必然だ。何度でも申し上げよう。トイカメラの真骨頂は 誰と写っているか?誰が写っているか? に集約されると思う。大切な人と一緒に自分も写る。チープな画像でも構わない。楽しいをずっと封印する記憶ガジェットだ。FUJIFILMがそう言っている(たぶん)。

そこそこいいお値段がするトイカメラだが、今、人生の波が好調な人が instax Pal2 を手にすると一瞬で元が取れそうな気がする。

チャーメラと並べてみた。一回り大きいがカバンの中では誤差だ。よい。
人を写すカメラ (にしたい)

そうじゃない限界中年おじさん代表としてスナップで使ったらどうなるのか?もちろんそこは抗っていきたい。リア充に負けてなるものかぁぁぁぁーッ!(大粒の涙)