なんてこった!YouTubeの視聴者プレゼントでオールドレンズを頂きました。古いと言ってもNikon純正の望遠大三元レンズAF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 Dです!憧れの望遠大三元〜ッ!嬉しい。発売開始は1998年だとか。フィルムとデジタルの切り替わり時期に開発されたズームレンズ最高峰の一本。嬉しい。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 Dを手に乗せた写真。
まきりなさんの森スナップで活躍していたあのレンズ…あざっす!

で、こいつを分解清掃せねばならんのです。レンズの状態としては(1)ナノクリの証の金の輪が外れかけており、(2)前玉の一部が欠けていて、(3)内部にカビが大発生、(4)フォーカスリングのスペーサーも脱腸しております…だいぶ重症です。でもどうしても復活させて使いたい!うおぉぉ!やってやるぜ。

前玉が欠けていて、レンズ内のカビも大変な状態に。このレンズを分解清掃します。

それで今回の分解清掃の目的をマニュアルフォーカスレンズとして復活させることにしました。内部に巣食う電子部品に関しては取っ払う前提で分解(という名の撤去)を行います。AFを諦めた理由は至極単純で(1)分解の過程ではんだを扱う技術が必要なこと、(2)初期の超音波モーター特有の”鳴き”は素人には対処不可能なこと(3)NikonのZマウントへFTZ経由で使う場合でもDタイプレンズはAF未対応なことの3点(AF-SタイプなのでFTZでAF使えました)で覚悟が決まりました。実際に分解してみて…MF化で正解!電子部品は素人には無理ポ。分解の様子を動画にまとめましたので記事と並行してご参照ください。

1.後ろ側から分解していく。

このレンズは基本的に後ろ側から分解していく運びになります。なお、MF化に向けて荒めの分解方法になりますので話半分でよろしくどうぞ。真似される際は自己責任でお願いします!古いレンズなので特にネジが固かったです。分解にあたって国産の精密ドライバーを買いました。↓コレ結構良かった。

マウントと絞り環を外す。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順01、マウント部から始めます。

精密ドライバーを使ってマウント側面の小さなネジを複数本外し、マウント電子接点を分離させます。電子接点は配線で内部につながっているのでプラプラさせておいてOK。次にマウントの円周上のネジ5本を抜きます。4本は長いネジですが、1本だけ短いネジがあります。いきなりネジが固着していたので舐めないように押す力8割・回す力2割で慎重に抜きました。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順02、絞り環を外す。

マウントが外れたら絞り環を引き抜きます。力を入れなくてもスッと抜けます。実は組み上げる方が大変。↓詳しくは後ほど。

電子部品までアクセスする。

絞り環の直下に金色のスペーサーがあります。固定用の穴で止まっている複数枚で構成されています。これを外します。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順03、後方鏡筒を外す。

レンズを横にしてスイッチプレートを外します。ネジ4本です。配線が中に繋がっています。うまく穴を潜らせるのもよし(不可能ではなかった)、はんだごてで分離させるもよし(持ってない)、私はMF化するのでニッパーで切りました(もう後には引き返せない)。次に↑上の写真左側の周辺にある3つのネジを外して後ろ側の金属鏡筒を抜きます。

最初の難関・ネジが舐めた!

金属鏡筒の最後のネジが…なめてしまいました。気分は最悪。ググったところ精密ネジはずしたる道具を発見。急遽Amazonでポチり、数日後到着しました。使い方:ひたすら押し回してネジ山ごと破壊。15分くらいグリグリグリグリ…グリグリグリグリ…(手が痛い)発狂しそうになる頃にポロッと抜けました。ネジの再利用は不可能です。組み上げ強度は落ちますが致し方なし。

一重に私の分解技術が原因で今回合計3本ネジがお亡くなりになっております。この破壊用ドライバーはうち2回活躍。ANEXありがとう。

はらわたを除去。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順04、電子部品を取り除く。

はらわたと言うのは電子基盤のことですね。さようならAF。手で抜けるものは手で。このタイミングでマウント側の電子接点も抜けます。電子基盤はネジ3本で止まっています。アース用と思われる最後の4本目が基盤の裏に引っ付いてます。↑写真右側のようになったら、ズーム機構側円周上に取り付いてるネジ6本を外して絞り機構ごと(後玉込みで)抜きます。

絞り機構から後玉群を抜く。

ようやくレンズ群にたどり着きました。全体の位置で言うと後ろ側の位置ですね。後玉群は回せば抜けますが↓このようにカニ目レンチで無理やり回すと溝にキズがガッツリつきます(涙)。本当は後玉群からさらに最後方のレンズを抜きたかったのですが諦めました。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順05、後玉分解。

↓後玉群の側面・真ん中あたりに空気穴(?)を発見。セロハンテープで止まっていました。なんの役目なんだろう?

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順06、後玉をさらにバラす。

写真右側↑に見える極小ネジを緩めると後玉群の前側レンズへアクセス出来ます。私はこのネジを破壊してしまいました…2本目。

絞り機構の仕組みを観察。

ここで小休止。絞り機構に絞り環を戻して仕組みを観察してみましょう。↓このように絞り値を伝達する棒絞り羽を動かす棒の2本がつながっている構成です。組み戻す際にはそれぞれを正確にセットする必要があります。本来は電子基盤がごちゃごちゃしている中で組み上げることになるので大変だと思います。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順07、絞り機構の説明。

なお本レンズの実絞りは1段刻み。マニュアル露出で絞りは1段刻みとなります。しょうがない!

2.分解の本丸は激ムズ。

ここから本番です。難易度爆上がりでお気を確かに!特にネジが柔らかいので注意が必要です。

ズーム機構を分解。

まずはズーム機構部分の内側にある6本のネジを外します。かなり固いです。そして外周上のズームリングのゴムを外します。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順08、ズーム機構を分解。

そのゴムの下に(絶縁用のものと思われる?)黒いテープが巻いてあるので外します。その下にスイッチのようなものがセロハンテープで止まっていました。AFは捨てたので無敵状態。ガンガン外します(非推奨)。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順09、ズームリングのゴムを外す。

続いてズームリングとヘリコイドを連動させている青い棒を抜きます。マイナスネジです。2本とも抜きます。(後で作業用にもう一度つけますが最終的には外します)

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順10、ズームリングとヘリコイドを外す。

フォーカスリングと前玉にアクセスする。

今度は前玉側の外周に目視できる3つのネジを外して前玉側の鏡筒を抜きます。この時点でフォーカスリングも抜けます。↓写真右側に見える測距メモリのバーとそれを繋いでいる金具を確認。連動している仕組みを理解しておくと組み上げが楽です。(偉そうにドヤってますが初見では心が折れてました)

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順11、フォーカスリングと前玉を外す。

前玉側の鏡筒が抜けるとレンズが剥き出しになるのでこのタイミングで前玉群を抜きます。普通に手で回して取れましたが、固い時は↓写真左に見えるカニ目の溝を使いましょう。2郡3枚構成の前玉群は前後でかぶさっているだけです。後ろ側に金色のスペーサーがあります。コレを取り付け忘れるとフォーカスが合わなくなったりするんでしょうね。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順12、前玉を外す。

無事にレンズを外した後はズーム機構の後ろ側に戻ります。赤と黄色の配線を外し、(青い棒は動作確認のために取り付けましたが外します)、黒いリング(カニ目の溝あり)と金色のリング(たぶんバネ)を外します。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順13、超音波モーターにアクセスする。

そうすると↑超音波モーター(いかにも機械っぽいリング)が引き抜けます。

超音波モーターを眺めて一息。

理由はないけどなんかかっこいい…もう動くことはないんだけど(涙)。Nikon初期の超音波モーターって劣化後のキーキー音が酷いらしいですね。この時代を経て今のZレンズがあるのか。感慨深いです。

これがNikon初期の超音波モーターだ。

3.後半は隠しネジ祭り・わっしょい!

ここから先どうにもこうにもレンズまでたどり着けず迷宮入りしてしまったAM2:00。自力で分解した涙の軌跡をご覧くださいませ。なお、本来であれば前玉側も電子部品と配線がてんこ盛りです。例によって↓これらの写真ははらわた処理済であることをご了承下さい。

フォーカスレンズを外したい。

まずは前玉側にネジ3本で止まっている測距メモリのバーを外します。そしてフォーカスレンズを動かしているネジ(この後の黄色い隠しネジ2本とセット組)と超音波モーターを連動させている金具(ネジ2本)を外します。金具が付いていた黒いリング(黄色い隠しネジとは別の隠しネジ3本が円周上に有)を外します。そして↓写真右側、フォーカスリングを回転させる途中に顔を出す黄色い隠しネジ(外周が滑車になっているマイナスネジ)を2本外します。もうワケわかんねぇ。この辺りの詳細は動画をご参照ください。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順14、前玉の隠しネジを外していく。

フォーカスリングのネジ3本セット(フォーカスネジ+黄色い隠しネジ2本)を外すとフォーカスレンズが前側に抜けます。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順15、フォーカスレンズを外す。

最新部はズームレンズ群。

ラスボスです。下記は片側の説明となりますので180度向こう側で同じこと繰り返します。私はここの隠しネジ1本を舐めさせてしまいました。めっちゃ柔らかいのでご注意を。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順16、最深部のズームレンズにアクセスアクセスする。

ズームレンズ群を動かすと(ここで一旦青い棒を取り付けると作業が楽)↓写真左側の位置に赤い隠しネジ(便宜上の呼び名で実際は赤くない)が出現します。これを外すと青い棒が付いていた青いズームネジ(便宜上の呼び名)が最端まで移動してくれます(↓写真右側)。ここで青いズームネジを外すとズームレンズ群が抜けます。物理的な仕組みでそうなっています。これで全部完了です。既にAM3:00…(実話)。ねむい。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D分解清掃手順17、ここが最終地。レンズをレンズを清掃して組み上げ直す。

レンズ清掃後、組み上げます。

あとはレンズクリーナーとペーパーを使ってレンズを丁寧に拭き拭き(したいところだったけど眠くて雑になったのはナイショの話)。今回初めて富士フィルムのクリーニングペーパーを買ったのですがコレ良かったです。柔らかいしケバも出ない。そして安い。

組上工程は分解の逆手順です。迷宮で精神的ダメージを食らった唯一の収穫は仕組みを理解できたことでしょうか。組むのはそんなに難しくなかったです。終わったのはAM4:00。おじさん徹夜はツラいよ。

4.テスト撮影!!!

でもやっぱり嬉しいので仮眠後にテスト撮影に行ってまいりました。少しだけですが作例を。カビと割れの影響はどんなものでしょう…ドキドキ。80mmの開放F2.8から試します。レンズが円であることを利用し、割れた部分をアスペクト比の外に持っていけば影響を最小限に抑えられると想定。カメラはNikon Z6ii。マウントアダプターは電子接点のない中華製のやつ。露出とホワイトバランスは揃えてます。RAW現像済。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D、分解清掃後のテスト作例。80mm F2.8
85mm F2.8

むむ!そんなに影響ないかな!?これは成功かも。ただしマニュアルフォーカス限定ですけどね。周辺は全域で流れているような気もする。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D、分解清掃後のテスト作例。105mm F2.8
105mm F2.8

ちょっと望遠に回すといい感じです。いい感じに見える!自分で作った飯が旨いのと同じ原理かもしれません。唯一の欠点は絞り値のExifが残らないことです。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D、分解清掃後のテスト作例。135mm F2.8
135mm F2.8

望遠だとF2.8でもピント幅は薄いですね。NikonのフルサイズZシリーズでは設定した焦点距離に応じてボディ内手ぶれ補正を動作させられます。望遠レンズを手持ちで使えるのはありがたいですね。でもズーミングして設定焦点距離から外れると暴れます。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D、分解清掃後のテスト作例。200mm F2.8
200mm F2.8

やっぱり望遠楽しい!動かない被写体であればマニュアルフォーカスでも無理なく撮影できそうです。MF専用レンズではないのでフォーカシングはお世辞にも良いとは言えず、フォクトレンダーみたいなヌルヌル感とは真逆の感じ。甘受します。

AF-S NIKKOR 80-200mm F2.8 D、分解清掃後のテスト作例、猫ちゃん。
135mm、ねこ様。

まとめ。

無事に(?)レンズ清掃が完了して感無量です。カメラブログを書き始めて3年くらい経ちますが、この記事の準備が(動画編集も含めて)過去1で時間を溶かしました…(´ཀ`)グフッ。これで安心して眠れます。で、ちょっと思ったんですがMFでこれだけ楽しかったら純正現役のZ望遠大三元ってどんな楽園見せてくれるんだろう!?

やばいやばいフラグ立っちまう。そこら辺にレンズ生えてないかな?買うか・超買うか。実質0円。うん、Nikon系YouTuberのあの人の思考に侵☆食されて〼。

最後までお読み頂きありがとうございます。ニッチ過ぎて誰かのお役に立つかどうか心配です。高級レンズのMF化なんて少なくとも転売ヤーの方にはお役に立たないでしょう!趣味万歳。また古いレンズ手に入れたら分解して記事にします。分解記事の一覧はレンズの分解清掃タグから是非。

では諸君、良き分解清掃LIFEを!かしこ。

ブログ管理人:isofss(イソフス)