カメラ好きの方であれば誰しも通るであろう大三元レンズの誘惑。しかしその尋常ではない価格ゆえにおいそれと購入できないのもまた事実。執筆にあたって最初にお断り申し上げたい。この記事の目指すところは購入しようか迷っているであろう貴方の背中を押すことである。買えるか・買えないか…ではない。買うのだ!乱暴すぎるその根拠を(カタログスペック抜きで)紐解いていこう。

Z6にNIKKOR Z 24-70mm f2.8 Sを装着したところ。

1.「この上がない」という事実。

ズームレンズの世界に限った話だが!事実だ。

大三元レンズとは、広角・標準・望遠領域の焦点距離をカバーしたズームレンズ3本の総称である。このレンズ群には各メーカーのその時代の技術の粋が注ぎ込まれている。特にズームレンズらしからぬ光学性能阿保みたいな耐久性は確実に他レンズと一線を引く水準になっている。なぜそこまで言い切れるのか?使ったことがあるからだ。こればかりは使わないと分からない。カタログが教えてくれないことがそこにはあるのだ。よく「アマチュアがプロの真似をして大三元レンズを買う必要はない」という話を聞くが、言い換えれば撮影現場に耐えられる性能と耐久力を持っているレンズということである。当然、良いものは価格が高い。

85mmと24-70mmを並べてみた。サイズ感はどうだろう?

左側がNikon Zマウントの標準大三元であるNIKKOR Z 24-70mm f2.8 Sである。思いのほか小さく軽かった。(※個人の感想です。)サイズ感は85mm単焦点を一回り大きくした具合だ。以前Fマウントの標準大三元レンズを使っていた時のことを思い出した…あれは重かった。その時のイメージを払拭しきれていなかったのだが、いざZマウント標準大三元レンズを開封した第一印象は(いい意味で)裏切られた!というものだった。もちろん軽くはない。ボディ側右手のグリップに小指あまりが気になる程度の重量感…といったところだ。こじんまりとまとめられたガラス玉の中にNikonの技術が詰まっているのか…。ひんやりとした鏡筒が妙な緊張感を掻き立てる。

沈胴式だが縮めていても24mmで使える。

同じくZマウントの小三元レンズNIKKOR Z 24-70mm f4 Sと比較しての感想だが、大三元レンズの方がズームリングが適度に重い。沈胴した状態から一定回さないと24mmにならないということもない。レンズフードにはロック機構があり、フード内側には反射防止の起毛処理が施されている。(ちなみにこの起毛は埃を吸い寄せる属性効果を持つ。)レンズは日本製だ!Nikonの生産拠点が次々に海外に移動している現状では日本製に拘りたい方は購入を急いだ方が良いと思う。なお、デジタル化された測距窓があるが(こんなギッミックいらないと思うのは私だけだろうか?)むしろ70-200mm大三元には備わっている縦位置でも使えるファンクションボタンを配置してほしかった。

ファンクションボタンや電子的な測距窓を備えている。
リングの操作感も気持ちよい作りだ。
レンズフードにはボタン完備。
レンズフードにはロック機構あり。

流石に高い買い物だったので慎重にならざるをえず、柄にもなくプロテクトフィルターを購入した。安物フィルターで大三元レンズの解像力をスポイルしては本末転倒だからだ。ここまで来てフィルターでケチる訳にはいかない(というバイアスがかかっている)。上げた拳が下せないとはこのことだろう。Nikon純正アルクレスト一択、14000円である。明日からはモヤシだけを食べて生きていくことにしよう。

長く使うためとはいえ、プロテクトフィルターも高額になる。

2.見送っても、必ず再検討する。

妙に自信がある。機材購入が「沼」に例えられる原因は↑これに尽きると思う。結局、欲しくなるのだ。例えば貴方が今、レンズのステップアップを考えているとしよう。候補は大三元レンズの1本か・F値可変の便利ズームか、はたまた大口径の単焦点レンズかもしれない。熟慮の結果、現実的な予算を考慮して大三元レンズではない候補を選択したとする。では、その後の人生で二度と大三元レンズに振り向かないと言い切れるのだうか?もしそんな輩がいるとすればお会いしてみたいものだ、恐らくカメラ自体を手放しているだろう。かくいう筆者自身も趣味でありながら4年で150万円ほど機材投資をしてきた愚か者である。レンズ沼を終わらせるための沼…といえば笑われるだろうか?昔のガンダムで「戦いを終わらせるための戦い」といった似たフレーズが使われていたようないないような、いかにも矛盾を孕んだ思想である。が、買えるか買えないかをいくら考えたところで人生の残り時間を消費するだけである。迷うくらいなら買って終わらせよう。

見れば欲しくなるのは間違いない。

3.失うものを天秤にかける。

大三元レンズの代表的な欠点は画角感が身につかないことだろう。これはどうしても否めない。これは個人的な主観だが、単焦点レンズだけを所有して画角感を身に着ける期間を持つことは重要と感じる。大三元レンズは逃げない。単焦点で十二分に不便さを味わいつつ、足で動くことを覚えてからでも遅くはない。逆も然りで、画角感が身に着いた自覚があるのであれば(ここは「自覚」でよいと思う)枷になるものは他にないはずだ。

別の観点だが、もし写真を収益のリソースにする計画があるのであればとっとと大三元レンズをポチるに越したことはない。もはや必須事項と言える。筆者自身は収益化の登竜門・ブライダル撮影に初めて臨んだ際に撮影報酬の10倍以上を投資した記憶がある…。あれは良い経験だったと(今は)思う。結果が求められる現場に臨むにあたり「この上がない」事実を手に入れて気持ちに余裕を持つことができたのは大きかった。安心はお金で買える。その余裕は結果に表れるし、結果は次の仕事の呼び水になる。駆け出しの頃にこそ大三元レンズは必要だ。

最後に予算問題について書きたいと思う。なにせ失うものNo.1は購入資金なのだから。結論、どうにかして工面する他ない。パッと出せる元手があるのならよし、ないのであれば作る。例えば他の出費から予算を回せるだろうか?晩酌を辞めるのはどうか?毎日250円(缶ビールとおつまみ?)の小さな幸せをかなぐり捨てるほど大三元レンズが欲しければ話は早い。週6日の晩酌であれば年間78000円になる。3~4年で大三元レンズの元が取れるうえに健康にも良い。大義名分を携えて妻の元へ急ごう。そう、天秤にかけるのだ。

底面が少し浮いてしまう。
余談だが、デフォルトだとこのように底面が少し浮いてしまう。
低反発クッションに鎮座させると安定する。
人間様用の低反発クッションに鎮座させると安定した。

結論:買えるか買えないかではない。

買うのだ!

この名言はNikon系YouTuberふぁらおチャンネルにて同レンズの紹介中に叫ばれていたセリフだ。さて、本日は終始偉そうな物言いであったことを深くお詫び申し上げたい。ほとんど全てブーメランで自分に突き刺さっている。もしも貴方の購入意欲に一役買えたのであれば本望である。ただ忘れないでほしい、一番幸せなのは購入前のググる時間であるということを。買ってしまえば待っているのは現実リアル。頭痛が痛い世界が待ち構えている。大三元レンズをもってしても撮影技術が上達する保障にはならないのだ。もし大三元レンズで撮れないならば他のレンズでも撮れないだろう。安寧は幕を下ろし、言い訳は一切通じなくなる。その門徒を叩く貴方の雄姿に拍手を送りたい。さて、とどめの一手を紹介して記事を締めくくろう。YouTube「老人と文学社 大三元不要論」と検索頂きたい。核心を突かれ、笑すら零れてしまうだろう。私は大三元購入時には毎回この動画にお世話になっている。ぜひご覧頂きたい。

では諸君、よきスナップLIFEを!かしこ。

ブログ管理人:isofss(イソフス)