カメラ沼と言っても1台目2台目あたりはまだまだ可愛い話。ところが3台目になって財布のタガが外れてしまったと記憶している。きっかけは人生初めての屋久島登山。縄文杉を見に行きたかったのだ。せっかくなら綺麗な写真を撮りたいし、動画にも挑戦してYouTubeに投稿したい(よしんばお小遣い稼ぎしたい)。下心満載で買ったカメラはPanasonicのDMC-G7だ。時は2016年。YouTuberの瀬戸弘司氏が紹介していたマイクロフォーサーズのGH3に興味を持ち、予算的に折り合いのつく下位互換G7を購入したのだった。

本来このMyカメラ沼シリーズはその名の通りの雑談記事なのだが、執筆にあたって写真を見返していたらかなりの珍道中登山だったことを思い出した。今すぐには叶わないものの感染症の影響が去った後に屋久島に行って縄文杉を独り占めしたい方の参考になるかもしれないと思い、2016年当時の登山ルートを記しておこうと思う。お役に立てば幸いだ。

1.雨の屋久島に持っていく?

Panasonic、DMC-G7の外観。

Panasonic DMC-G7はマイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラだ。G7自体は既に生産終了品だが、一眼動画黎明期を下支えした良いカメラであったと思う。今でもPanasonicのアーカイブでスペックを確認できる。1600万画素のセンサーで4K30p動画に対応している。バリアングル液晶で自撮り動画も撮りやすい。さらにマイクロフォーサーズ独特のメリットも光る。ボディ重量は410gと軽量。フルサイズ一眼に比べればコスパも良好。特にレンズが安い!この時に買ったのはボディ+標準ズームレンズ+プロテクトフィルター+予備バッテリーetc…合計79971円だったとAmazon履歴で確認。システム一式で8万円以内で収まった。レンズはLUMIX G VARIO 14-42mm/F3.5-5.6 II ASPH./MEGA O.I.S.と言う名の標準ズーム。とにかく安かった。ここから先の作例写真は全てこのレンズで撮影したものだ。

決定的な弱点もあった。G7は防塵防滴性能を備えていないのだ。そんなカメラを梅雨の屋久島に持ち込んで大丈夫なのか?結論から言うとダメだった!土砂降りの中で撮影し続けた結果、EVFの内側が曇ってしまい、下山してもずっと結露が取れず、売却する時までずっと曇りっぱなしだった。屋久島に防塵防滴でないカメラを持っていくべきではない。

2.二泊三日の野宿縦走計画。

最大の目的は縄文杉を満喫すること!しかし全国から、いや全世界から訪れる観光客によって縄文杉付近は渋滞するというから困ったものだ。神秘的な世界を堪能することは無理だろう。だから人が選ばないルートで挑戦することにした。南側から縄文杉を目指す二泊三日の縦走アタックコースである。途中に旅館などある訳もなく、屋外トイレですら数える程度。水も現地調達だ。無人山小屋が使えなかった時のためのテント泊装備と食料・着替え・撮影機材を容量70Lのザックに詰め込むと10Kgは軽く超えていた。それを背負い九州最高峰の宮之浦岳(1936m)を経由して縄文杉を目指す。しかも季節は6月。土砂降りの雨の中を1人で登る、完全にドM登山である。

縄文杉を堪能するための鬼コース。良いこは良い子は真似しないでね。

ここまで書いておいて本末転倒だが、このルートはめちゃくちゃしんどいので登山初心者の方には決してオススメしない。特に2日目に雨が降ると地獄。標高が森林限界点を超えているので常に雨にさらされ、人っ子ひとりいない森のど真ん中で引き返すことも出来ず、南側から縄文杉を目指す人もほとんどいない。ギブアップできない環境なので下手したら遭難してしまうだろう。この時点で登山歴約30峰だった私も泣きながら登ることになった。足にマメができ、ふやけて破れ、痛みを伴いつつ一日中歩き続けることになった。でもご褒美として無人の縄文杉を心ゆくまで2度も堪能できた。興味を持たれた方は下記の日程をご参照あれ。

  • [初日]鹿児島発のフェリーで15時頃に安房港に入港。
  • バスかタクシーで淀川登山口まで移動。
  • 2時間ほど上って淀川小屋(無人)で一泊。
  • [2日目]花之江川を渡り宮之浦岳まで登る。
  • 下る。新高塚小屋か高塚小屋のどちらかで二泊目(無人)。
  • 2日目は概ね10時間は歩く。とにかくしんどい。
  • 高塚小屋から縄文杉まで歩いて5分。夕方の縄文杉を鑑賞。
  • [3日目]フェリー出港に間に合わせるためにスピード下山。
  • 5時に起きて無人の縄文杉を堪能。そのまま下山。
  • 待ち時間ゼロでウィルソン株を満喫。
  • トロッコ道を下り、辻の岩屋を鑑賞。
  • 11時までに白谷雲水峡まで降り、バスに乗る。
  • バスを乗り換えて楠川温泉で3日ぶりの風呂。
  • 宮之浦港からフェリーで鹿児島へ。

3.いざ縄文杉へ向けて出発!

では実際に鬼ルートのご紹介と参ろう。一般的に、縄文杉観光と言えば宮之浦港にフェリーで入港して地元の民宿に泊まり、朝一番のバスで白谷雲水峡へ移動、徒歩で縄文杉に向かい、夕方までに戻ってくる日帰りコースが鉄板だ。しかしそれでは人混みは避けられない。ならば逆を行こうと言うのが鬼コース。当然、ガイドサービスなどは存在せず二泊三日の自力縦走となる。

バスの乗り過ごしてしまい、ひと区間走って追いかけるも当然追いつけず涙。
やらかした時の写真。

誰も助けてくれないセルフプランでのっけからやってしまった話。バスを乗り過ごしてしまった。屋久島の東側・安房港に到着後、その日のバスの最終便で淀川登山口まで移動しなければならない。そのバス停は安房港から50mくらい離れた広場にポツンとあるのだが、雨が降っていたので私は安房港のヒサシがある場所で雨宿りしていた。バスが来る様子を動画に収めようと悠長にカメラを構えていた。他に乗客はいない。だからバスが来た時、バス停には誰もいなかった。ご想像頂けるだろうか?ぶうううううん…(バスが立ち去る音)???

ちょっと待てぇぇぇ!

誰もいないバス停にバスが止まってくれるはずもなくバスは去ってしまった(因果応報)。最終便である。頭が真っ白になりながら走ってバスを追いかける。大量の登山装備を担いだまま誰もいない道路を走り、ひと区間走ったところで心が折れた。やってしまった…。泣きそうになりながら近くの地元住民に事情を打ち明ける始末。そしてタクシーを呼ぶことにした。まず呼ぶだけで1500円ほどかかり、そこから目的地(淀川登山口)まで乗って合計6000円。頬を伝う水分は雨か?涙か?

屋久島では雨が降っていてもバス停の前に立っていましょう。

屋久島に到着。雨に濡れた植物が美しい。
写真撮ってる場合じゃなかった。

淀川登山口から淀川小屋まで登る。

初日から財布を爆散させながら登山が始まった。今日のゴールは淀川小屋。大粒の雨が降りしきる中、2時間ほどで着いた。まだ明るいが18時は過ぎていた。

淀川登山口から淀川小屋を目指す道中。

屋久島内にいくつか点在する無人小屋は基本的に早い者勝ちで使用可能だ。万が一満員だった時は外でテント泊となるが、こんな雨の中を逆走ルートで登る輩はそうはいない。この日の淀川小屋には先客のソロ登山者が2名いた。きっと早い時間にバスで来たのだろうなっバスで!

無人の淀川小屋。ここで一泊。
淀川小屋にて。
屋久島縦走1日目を終え、安堵する。

重い荷物を下ろして一息つく。濡れた服を着替えたら食事タイムだ。二泊三日5食分を持参した。

縦走中の自炊も楽しみの一つ。
カレー・チーズ・ウインナー・スープ。ご馳走だ!

なお、小屋にはもれなくネズミが生息している。一泊目(淀川小屋)も二泊目(高塚小屋)も夜になるとネズミが食べ物を探しにザックを漁りに来ていた。食料品はもちろん、ゴミ類もパッキングして匂いを完全にシャットアウトしておかないとザックを食い破られて散らかされることになるのでご注意あれ。

さて、明日はいよいよ鬼コース最大の正念場を迎える。この試練を越えた先に縄文杉独り占めタイムがあるのだ!次ページにて二日目・三日目の行程をご紹介。(う○こトラブル・ならびに四方をJKに囲まれた話を含みます。)

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