小さいは正義だ!小さいレンズに目がない私にとって引き伸ばしレンズとの出会いは必然でした。NikonユーザーでもあるためNikonの引き伸ばしレンズEL-NIKKOR 50mm F2.8はマストバイだったわけです。しかし実践投入までは長い道のりでした。そんな珍道中を綴ります。
どうやって生き返らせるか?
引き伸ばしレンズはフィルム時代に暗室の中で使われていたフィルムプリント用のレンズです。しかし今やミラーレス戦国時代、ミラーレスカメラの方がフランジバックが短いためアダプターを噛ませることでレンズを甦らせることが可能になりました!ロマンは大切です!(以下フランジバックのことをFBと表記します)

このFB調整については文章で説明するにはあまりにハードルが高いためYouTube版で解説しております。難所が2つ、(1)引き伸ばしレンズはレンズ毎にFBの長さが異なること。(2)引き伸ばしレンズにはフォーカスリングが存在しないため、ピント合わせのためにヘリコイド付きアダプターが必要になること…。安くはありません。
 ポチップ
 ポチップ引き伸ばしレンズをミラーレスカメラでMFレンズとして運用する場合は↑SHOTENのヘリコイド付きアダプターがおすすめです。値段相応のビルドクオリティがあるので一生使えると思います。さらに引き伸ばしレンズをAF化したい場合はTECHARTのTZM-02を購入すると良いでしょう。↑写真のZ50IIにはTZM-02が付いています。
ツッコミどころだらけw
紆余曲折を経て完成したレンズを実践投入してみました。これがまた(狙い通り)癖玉わっしょいザワザワ祭りでして大変満足しております。バブルボケがたまりません…よだれがジュルリ。

復活させた引き伸ばしレンズには「最短撮影距離が(A)ボディのFBと(B)FB調整のDIY精度に依存する」という変わった特徴があります。といっても物理の世界なので「引き伸ばしレンズのFB – (A) – (B) = ヘリコイドの回転角 = 最短撮影距離」なのです。←何言ってるか分かった方はだいぶヲタクですよ。

Nikon ZマウントのFBは16mmで他社マウントよりFBが短いのです!つまりZボディで引き伸ばしレンズを使うとより寄れるレンズとなります。正直なところ描写に関してはかなり緩さを感じますが、寄れるならば許して差し上げましょう。

レンズ構成は4群6枚、シンプルですね〜。重量は100gちょっと。アダプターの類を合わせると300gくらいあるかもしれません。引き伸ばしレンズ自体は小さいのですが、金属のアダプターやFB調整用の筒があるのでどうしても前に突き出る形となります。ここはロマンと相殺でお願いします。

中古で引き伸ばしレンズを探そうとすると前玉に傷のついた個体とよく出会います。もとより暗室用のレンズですから前玉の保護など考えられていない設計なのでしょう。多少描写が劣化するとしても心の保健のためにプロテクトフィルターをつけることにしました。径は40.5mmでした。このサイズのアルクレストは存在しません…残念。

そして圧倒的に逆光に弱いです、元は暗室用ですから!このようにありとあらゆる逆境が襲いかかってくる引き伸ばしレンズ。でも、NIKKORの名前がついた金属鏡筒レンズなのです。それだけで十分です。

EL-NIKKORには末尾にNがつく樹脂鏡筒の後期型も存在します。質感厨の私としては金属鏡筒の初期型に首っ丈でした。F値もF4ではなくF2.8の型を選びました。光学系の状態が良い個体だったのでこれは一生物にします!

画角は王道の50mm。フルサイズ画角のまま使えるのは魅力的ですね。歪曲収差にも強い性質があり、電子的な補正がなくてもほぼほぼ真っ直ぐに写ります。さてTECHART TZM-02を使って動き回る猫さんをAFで捉えました。引き伸ばしレンズをAF化出来る日がくるなんて!嗚呼ッ、まさに道楽です。
「人と違う」を楽しむ。
若い頃は人と違うことほど恐ろしいものはありませんでした。でも大人になってから価値観が変わりました。人と違うことは実に面白いことです。趣味の世界においても同じことが言えると思います。かつての業務用主力レンズ、でも今や誰も気に留めてくれない二束三文レンズ、復活させるために相応の投資をしなければならないレンズ、完成してもシャキッと写らないけどそこそこ寄れる50mm F2.8の王道画角レンズ。それがEL-NIKKOR 50mm F2.8です。

私が生まれて初めて分解清掃したのも引き伸ばしレンズでした。当ブログの引き伸ばしレンズ記事を集めたタグのリンクを貼っておきますので興味が湧いた方はおかわり頂ければ幸いです。YouTube版も公開しましたらリンク貼りますね。
熱中できるものがあるって幸せですよね。ようやく叶ったFB調整、これにて一件落着です。一日一撮企画に持ち込んで長期レビューも作ってみたいなぁ。
ブログ管理人:isofss(イソフス)


