SNSでは猫も杓子も大シネマチック時代。皆、本当に得心してその言葉を使っているのだろうか?ここに古い古いシネレンズがある。名はCINE-NIKKOR 13mm F1.9と言う。販売時期は1950年代というから驚きだ。これをPENTAX Q10に繋いで写真を撮ってきた。ウンチクより結果が全てだ。まずは作例20枚をご覧頂きたい。

シネレンズの描写をご覧あれ。

この日は雨が強かった。シネマっぽい雰囲気になるのはいいが私はズブ濡れである。あまり意味を成さない傘を差しながら風景をパシャリ。なんとまぁ周辺のボヤボヤが凄い。これでもF5.6まで絞っている。

CINE-NIKKOR 13mm F1.9作例ファーストカット。雨の街スナップ。周辺画質にご注目下さい。

この記事の写真は全てRAW現像している。CINE-NIKKOR 13mm F1.9はDマウントレンズ。フランジバックの関係でPENTAX Qマウントでしか使えない。もちろんマウントアダプターは必須だ。既に生産終了になっているQシリーズをお持ちであれば(以降の写真をご覧頂き)Dマウントシネレンズの沼へ是非お越し頂きたい。

球面収差が見てとれるCINE-NIKKOR。レンズ構成はペッツバール型。

とにかく滲みがすごい。周辺がまともな画質になるのはF11あたりだった。電子接点はないのでExifデータは記憶頼りだが、この日の屋外撮影はF5.6で固定していた。

CINE-NIKKORで近接撮影した作例。木の苔部分にフォーカスしています。

この滲みは近接になる程分かりやすい。最初は像面湾曲か?と思ったが、光源を入れると全体が滲んでいたので球面収差かもしれない。もしくはその両方か…。

意外とCINE-NIKKORはフリンジが出なかったです。

フリンジは抑えられているように感じる。この写真の周辺減光はRAW現像時に足したものだ。本来は開放でもほとんど減光しない。鏡筒がフードの役割を果たしているレベルでレンズが奥に詰まっているからだ。

ミニチュアみたいな写真。

ミニチュア風な風な写真が撮れるCINE-NIKKOR 13mm F1.9の描写。

真ん中しかまともに写らない特性を逆手に取った写真。風情があるではないか。どのみち絞っても改善しない。必然的に日の丸構図ばかりになるのだが…まぁこれも味ということで甘受しよう。

CINE-NIKKOR 13mm F1.9で街スナップ、今回の今回のベストショットは雨降りを歩く後ろ姿。

本日のお気に入りベストショット。焦点距離が13mmのレンズだが、PENTAX Q10に繋ぐと換算73mm程度になる。ボディ含めて手のひらに収まるサイズ感で中望遠足掛けの画角が楽しめる。これが一番大きなメリットだと思う。

ガラス越しの街スナップ。中央部分の描写はそこそこだ。なにもしなくてもシネマチック。

PENTAX Q10にはボディ内手ぶれ補正が内蔵されている。メニュー内からレンズの焦点距離を入力することで手ぶれ補正を使えるのだ。体感としてはスチル用途だとまぁまぁ効いている感じ。1/30秒くらいが限界か。動画だと16:9に上下がクロップされる関係でより望遠になる。微ブレが目立っていた。

屋内・定常光のみ。

光が少ない屋内環境でのCINE-NIKKORの描写。F1.9なので明るさは担保できるが担保できるが描写は厳しい。

PENTAX Q10のセンサーは小さいのでISO感度を上げたくない。屋内では開放F1.9に固定して撮影した。ISO:100で撮影できたものの収差がさらに増してしまった。こういうレンズだと割り切るほかない。むしろこれがいいのだ(たぶん)。

白熱灯下のパンをCINE-NIKKORで撮影。物撮りにはあまり向いていない。

解像しない。いや、解像しようなどと思ってはいけない。ボヤボヤを楽しもう。

ショーケースに入っているバッグをCINE-NIKKORで撮影してみた。

ショーケースに入っているブランドバック。物撮りには向かないと思った。レンズが悪いと言いたいのではない。当時としては会心のプロダクトだったはずだ。こういう時代から始まって徐々に進化した先に現代の大解像時代があるのだろう。成れの果てに疲れた現代人が収差を求めてシネマチックに傾倒するのは…なんと皮肉なことか。

CINE-NIKKORで室内光のみで花を撮ってみた。背景のカラーシフトが面白い。

元は8mmフィルム映画用のレンズだが、デジタルセンサーで使うと自然光と定常光のカラーシフトが楽しめる。

夜スナップ行ってきた。

CINE-NIKKORで夜の街灯を撮ったが、流石にPENTAX Q10のセンサーが悲鳴を上げている。

暗い環境ではどうか?夜スナップに持ち出してみた。開放F1.9でもISO:800あたり。小さいデジタルセンサーには厳しい環境だった。これでも現像でリカバリしているつもりだ。

CINE-NIKKORで夜スナップ。開放F1.9でもISO800なのでノイズは出る。

もしかしたら…中心に人物を置いてちゃんとライティングを組めばシネマチックなポートレートが撮れるかもしれない。Q10の操作性を考えるとポートレートには向いてないと思うが…。

カラーフィルター使ってみた。

CINE-NIKKORは8mmフィルム映画用のレンズだ。実はレンズ購入時に黄色のカラーフィルターが付属していた。レンズフィルターに色がついているタイプだ。ヤフオク出品でもフィルター付きのCINE-NIKKORはよく見かける。ホワイトバランスが変えられない時代ならではの道具なのだろう。そのまま使うと単純に黄色被りするだけだ。

CINE-NIKKKOR 13mm F1.9に付属していたカラーフィルターを装着した風景写真。

周辺がちょっとケラれてしまったが、ホワイトバランスを蛍光灯に変更するとフィルムっぽい色にカラーシフトした。本来は蛍光灯下で8mmフィルム撮影をする用途だったのだろうか。

こちらはCINE-NIKKORからカラーフィルターを外した通常の風景写真。色が違う。

↑こちらが何も付けていない状態。1/3段くらい明るさが変わった。単純な色調整ならデジタル現像でいくらでも変えられるので、今となっては無理につける必要はなさそうだ。

アンダーと相性がいいかも。

このシネレンズ、アンダーな写真がお似合いかもしれない。

撮影に3回ほど出かけたものの天気が悪かった。冬の曇天でアンダーな写真ばかり撮ってしまったが、これが意外に良かった。

シネレンズは彩度を落としてもいい感じになるな。CINE-NIKKORの作例写真。

このレンズは頑張っても解像しないし色のりも良くない。だからこそ彩度を落としたりアンダーに振った仕上げと相性が良い。ものは考えようだ。こういう写らない描写が欲しい時にはうってつけだ。

CINE-NIKKORでそこらへんのマンホールをシネマチックに撮った。

そもそもPENTAX Q10の背面液晶(46万ドット)が超絶見にくいのだ!MFで正確にピント合わせしようなど愚の骨頂。家に帰ってモニターで確認するまで結果が分からない…という意味でフィルム写真みたいな一面も残っているシステムなのだ。なんとも不便益を楽しむ覚悟が試される。

モノクロ時代のレンズだからこそ。

そうだ、この時代はモノクロ全盛期だったはず。現像してみて大正解。ボヤボヤの収差もモノクロだと緩衝されてさほど気にならないが、どちらかと言えばコントラスト強めの(GRみたいな)使い方がしっくりきた。

モノクロ全盛期に作られたCINE-NIKKORは、やはりモノクロ写真で活きると思った。モノクロ作例。

モノクロでがっつり陰影をつけて2倍速くらいのムービーを撮るとTHE 昭和な動画が撮れた。まさに昔の映画っぽい。

今回のモノクロ写真で一番のお気に入りかも。CINE-NIKKORモノクロ街スナップ作例。

レンズの個性なんて使ってみないと分からないものだ。良い面も弱点もある。古いレンズであればなおのこと。このCINE-NIKKOR 13mm F1.9で撮影した別カットや動画クリップを動画にまとめたのでご興味湧いた方は是非是非↓↓↓

CINE-NIKKORの特徴。

ここからはCINE-NIKKORを使ってみた雑談。なんと言ってもこのコンパクトさには脱帽だ。しかし操作感は最悪。これはPENTAX Q10側の問題なのだが、前述の通り(1)背面液晶がこの上なく見にくく、(2)社外レンズ装着時は起動に時間がかかり、(3)その度に焦点距離入力画面が出てくる謎仕様。慣れの問題ではあるがストレスだった。しかしジャケットのポケットに入るサイズ感だから許してあげよう。

CINE-NIKKOR 13mm F1.9をPENTAX Q10に繋いだ外観写真。

スナップカメラで常用したい。

嬉しい誤算だったのはフォーカスリングの滑らかだったこと。個体差だと思うが、前回使ったSUN OPTの換算200mmシネレンズ(下記リンク参照)よりも圧倒的にCINE-NIKKORの方がフォーカスリング操作がスムーズだった。SUN OPTと比べた時の撮影枚数がそれを物語っている。今後どちらを常用するか?と問われれば確実にCINE-NIKKORだ。

スマホに撮れない写真。

シネレンズの中でも群を抜いて小さいCINE-NIKKOR 13mm F1.9を、世界最小レンズ交換式カメラPENTAX Qシリーズに繋げることで、世界最小構成のオールドレンズが使える一眼カメラが完成するのである。スマホ並みのサイズでスマホで撮れない画角の写真が撮れる。しかも低解像で収差まみれ。これを個性と言わずなんと表現できようか。ニッチとは差別化なのだ。

スナップカメラに求めること。

PENTAX Q10が再販されればそれがベストアンサーなのだが…。現状10年前のカメラなので操作性や電池問題とは一蓮托生。ユーザビリティを追求するなら現行品に勝るものはない。フルサイズだと大きくなるので、APS-Cやマイクロフォーサーズで趣味カメラを探そうかと真剣に悩んでいる。

やはり(1)Wi-Fiデータ転送は欲しいし、(2)USB給電も欲しい。(3)バリアングル液晶と、(4)それなりの堅牢性も欲しい。欲張りだろうか?(5)RAW現像民としてはNikon Z fcあたりがサブカメラの最適解のような気がしている。黒ボディが出るまで待とうかと思ったが、現行シルバーに似合う革ケースも出回っているようで悩ましい限り↓。やはり(6)見た目は重視したいのだ。

悩めるうちが幸せなのだろう。何はともあれシネレンズは楽しかった。写らないけど個性的な色が楽しい。これからもちょくちょくスナップに持ち出そうと思う。古いレンズで不便益を味わいながら現行品のありがたさを噛み締めるだなんて、改めて平和な趣味だと実感した今日この頃。ありがたや。

では諸君、また沼の先でお会いしましょうぞ。良き泥沼LIFEを!かしこ。

ブログ管理人:isofss(イソフス)