春は出会いと別れの季節。今まで付き合ってきた彼女は数知れず(もちろん人間のことではない)、Nikon・Canon・SONY・富士フィルム・SIGMA・PENTAX…実にOLYMPUS以外は国内メーカー制覇で散財という名のデートを豪遊させてもらった。頂いたご縁には感謝しかない。特にこの2年、Nikon Z6と出会って本当に楽しい日々だった。まさか別れることになるなんて…。流石に今回はポチる瞬間は胸が痛んだ。まるで人間の彼女と別れる時みたいな気持ちだった。…大丈夫、たぶんZ6iiに戻ってくるから!では、「さくら」が頭の中で鳴り響く今の気持ちをここに綴りたいと思います。
1.きっかけはミニマルなX-E4。
現状に不満があった訳ではない。
そもそも私はフルサイズ信者かつ全ショットRAW現像おじさんだ、否…だった。そのRAWデータ転送が苦痛極まりない問題に頭を悩ませていた思いの丈を少し前の記事でぼやき倒している。またここ1ヶ月は(理由は後述するが)折角の大三元レンズが文鎮になりつつあり、小型のマニュアルレンズで撮った写真をカメラ内RAW現像でチョチョっと仕上げてiPadへJPEG転送するという撮影スタイルが定着しつつあった。最適解を探していたのだ。しかもそれが意外に楽しかった。今思えば、APS-CセンサーかつJPEG撮って出しで一日の長のある富士フィルムに辿り着くフラグを踏んでいたように思う。
そこにきてX-E4の発表である。タイミングが良すぎた。どんなものかとヨドバシへ物色にいった話はこちらからご参照あれ。確かにX-E4はミニマルなデザインだし、コスパも良い。だがZ6に肉薄するプロダクトではないように感じた。もし仮にZ6に肉薄するカメラがあって、しかも自分の撮影スタイルにマッチするのであれば…そう思っていた時期が俺にもありました。この時点では乗り換えるなんて夢にも思っておらず。だがしかし…
2.Nikon Zマウントのレンズに思うこと。
思い返せばブログを書き始めるきっかけになったのもZマウントのレンズの描写に感動したからだった。間違いなく、カメラ沼人生史上1番美しいレンズ群だった。全くもって撒き餌でないNIKKOR Z 50mm f/1.8 S(こちらを参照)、見た目はアレだが描写はすごいNIKKKOR Z 24-70mm f/4 S(こちらを参照)、人生で1番美しい描写だったNIKKOR Z 85mm f1.8 S(こちらを参照)、Nikon最後のMade in JapanレンズNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S(こちらを参照)。Zマウントはまさにオバケ描写(褒め言葉)だ。私はスチルがメインだが、動画用途でもZレンズはフォーカスブリージングがほとんどゼロ。乗り換えておいてなんだが、Zの描写は今でも大好きだ。
ではなぜ乗り換えに至ったのか?自分の撮影スタイルを振り返った時、描写よりも携帯性が大切だと痛感したからだ。ここ最近は標準大三元レンズを使ったスナップ撮影に挑戦していた。なるほど、速射性が重要なスナップ撮影においてはズームで瞬時に画角を選べるというのは確かにありがたい。しかしデメリットも多く、胸に手を当てて熟慮すると抜き差しならない状況だった。撮影が楽しくならなければ元も子もない。
ミニマルとは逆のZマウント。
(1)やはり重い。Fマウント時代よりは軽いが、それでもZ標準大三元レンズはデカくて重い。スリングタイプのカメラバッグ(容量5L)にはレンズフードを外さないと入らなかった。実は小型の引き伸ばしレンズを手に入れてからはレギュラーの座を明け渡していた。27万円以上したのにここ1ヶ月外で使っていない事実…。(2)結局絞っていた。スナップ写真においてはボケ描写は重要ではないし、日中の明るさを考えるとF5.6〜F8運用が最適解だった。そもそもF2.8通しである必要がなかったのだ。(3)いざボカしたい時に半端。ボカすなら単焦点の方が圧倒的に有利だと思った。フルサイズのF2.8であっても(焦点距離が標準画角であることもあってか)被写体が浮き上がる程の感動は感じなかったのだ。絵の強さでいうと明らかにNIKKOR Z 85mm f1.8 Sの方が突き抜けていた。結局、私の用途に合っていなかったのかもしれない。(4)暗所でF2.8は半端。ここ一年、Zoomウェブカメラでの使用頻度が多かったのだが、例えば夜の室内灯のみの環境で・開放F2.8・シャッタースピード1/60秒で→ISO感度2000での運用だった。2時間連続撮影でカメラボディがほんのり温かくなっていた。前述のZ85mmだと同じ環境でISO800で済む。精神衛生上気持ちが悪かったのが本音。画角的にも望遠端70mmはバストアップでは若干短く、APS-Cクロップ90mmくらいで使っていた。つまり、別に大三元である必要はなかった。もうこうなると単に見栄で所有しているだけになってくる。(5)Zマウントでパンケーキレンズが出る気配がない。レンズロードマップ上には28mmと40mmが存在するが、長くてあと2年くらい待つ羽目になるかも知れない…。
まとめると、私がレンズに求める要望はコンパクトで明るい単焦点レンズだ。現状、Zマウントにはそれが存在しない。
3.初代Z6に思うこと。
初代初代と揶揄されてきたZ6。でも私は知っている、カタログで数値化できないモノの良さがZ6にはあることを。特に(1)グリップの握りやすさ、(2)全体の剛性感、(3)EVFの美しさ、(4)RAW現像の美しさ、だ。欠点といえばRAWデータが重すぎてWiFiで飛ばすには難がある…といったところか。
Z6iiに憧れた。
後継機のZ6iiはさらに仕上がっているように思う。Z6からZ6iiへの進化の過程を並べてみよう。もちろん上記のメリット4つを踏襲し、加えて(5)水準器がシンプルになっている。撮影後に水平出しトリミングをしたくないので私は最初から電子水準器を使っているのだが、Z6の水準器はゴンぶと老眼仕様で絵に被るのだ…。Z6iiではスマートになっており羨ましい限りだ。(6)撮影後再生が速くなったらしい。EXPEED6が二機搭載されているからだろうか?Z6はとにかく表示まで時間がかかる。(7)記録メディアがダブルスロットになった。趣味用途であってもシングルスロットは萎える。撮影の度に同じスロットでメディアを何度も何度も抜き差しするのは気持ちのいいものではない。おそらくボディの中で1番酷使している場所だったと思う。(8)USB給電が可能になった。Z6ではZoom中に電池切れしたことが何度かあった。しかしZ6iiに買い換えればウェブカメラ用途で(USB-Cに接続していれば)電池切れの心配はなくなるのだ。
以上8つが私がカメラに求める道具としての完成度だった。
こうやって条件を並べてみるとZ6iiは非常に良くできた素晴らしいカメラだと思う。スナップ用途であれば向こう5年は使えると思った。現在のボディ単体価格は24万円前後、マップカメラでZ6売価が8万円程度、差額にして16万円…何度かカートに入れてみたが(あるある?)…苦笑。そうこうしているうちに見つけてしまったのだ、X-T4を!
4.Z6ii vs X-T4、仁義なき戦い。
ヨドバシでX-E4を物色したかったのだが発売日前でまだ実機がなかった。なのでX-E4を想定して(恐らく共通部材の多い)X-T30やX-S10などを触ってみた。ついでにXpro3とX-T4もサワサワ…ん?なんだこれ、X-T4のEVFめっちゃ綺麗なんだけど…。調べてみたらZ6と同じ0.5型OLEDの369万ドット。これ同じ製造メーカー同じだったりして…(妄想)。興味が湧いたが吉日、調べると前述の私がカメラに求める道具としての完成度をX-T4はほぼ全部叶えていた。
- グリップの握りやすさ×、でもカバンに入れやすい形状。
- 全体の剛性感○。防塵防滴金属ボディ-10℃耐性。
- EVFの美しさ○。Z6とスペック上は一致。
- RAW現像の美しさ?、その代わりフィルムシュミレーション。
- シンプルな水準器○。むしろZシリーズより良い。
- 撮影後プレビュー爆速○。むしろZシリーズより良い。
- 記録メディアダブルスロット○。SDXC UHS-ii対応
- USB給電○。むしろ充電器は別売。
優秀な点はまだある。(9)USBポートの蓋が開けやすいタイプ。X-T4は気が利いている。Zシリーズはゴム埋め込みタイプ。ウェブ会議の度に開け閉めして摩耗していた。(10)X-T4になってバッテリーが強化されている。Z6iiと同等の2000mAhクラス。カタログ上ではZ6より撮影枚数が多い。(11)14bit非圧縮RAWが残せる。Z6iiと同じ。エントリーモデルでは圧縮RAWだけだったりする。(12)シャッター耐久数が30万回。メカニカルシャッター秒間15コマ連写のために頑丈に作ったのだとか。連写しない私にはむしろお得である。ちなみにZ6iiは20万回。もちろんサイズが異なるが、それでも安心材料になるのは間違いない。(13)シンクロスピードが1/250秒。やるなX-T4。シャッターユニット周りに男気を感じる。Z6iiは1/200秒。(14)縦位置グリップ(VG-XT4)が使える。ロマンだ。Z6iiのそれよりも安い。(15)SIGMAがXマウントに参入の噂あり。マジで胸熱なんですが。絶対買うわ。
いまいちな点もある。スチル派なのでバリアングルモニターよりチルトが良かった。背面モニターの解像度はZ6は3.2型210万ドットだがX-T4は3型162万ドットに減る。それくらいだ。………息してる?(ふぅはぁはぁ…)もはやフルサイズではないことくらいしか買わない理由がなかったのだが…。偶々かもしれないが私が見た時にはボディ単体17万円ちょっとだったのだ。こうなるともう大義名分探しの旅が始まる。後はレンズ次第だ。コンパクトで明るい単焦点レンズがあれば!
5.ライカ用単焦点という選択。
もとよりスナップ撮影でマニュアルフォーカスレンズを使うことには慣れていた。だから目をつけていたレンズをついに買う理由になってもうた。その名はVoigtlander Ultron 35mm F2 Aspherical VMだ。見よ、この美しい造形を。ビール3杯はおかわりできる。来月には真鍮製の2型が発売予定だ。私はフォーカスノブが欲しかったので1型を選んだ。見た目はヴィンテージだがレンズ構成は近代的な構成らしい。5群8枚・非球面レンズと異常部分分散ガラスを各1枚ずつ含んでいる。焦点距離はAPS-Cセンサーで使うと35mm換算で52.5mm、大好きな画角だ。開放F2で重量170g。最短撮影距離は58cmだが、FXマウントへ繋ぐヘリコイド付きアダプターを介してさらに寄れる。「いつかはコシナに戻る」と言ってきた夢がついに実現した。もちろん、毎年粗品とカタログを送ってくれたコシナへの恩返しだ。
時は満ちた。
…もはやそう言い聞かせている。道具として完成しているように思えるX-T4、小さくとも現代的な描写のウルトロン、手元には2年間頑張ったZ6、文鎮化しつつあるZ標準大三元レンズ。手持ちのZ関連を売れば追加費用無しでX-T4・ウルトロン・ヘリコイド付きアダプターが買えてしまう条件が…揃ってしまったのだ!よし乗り換えよう。もしフルサイズの描写が恋しくなったら今度こそZ6iiに戻ればいいじゃん!(ありそうだから怖い)
ポチッ。
うああああぁぁッ!逝ってしまいました。新しい冒険の予感。後悔はないデス。ありがとうZ6、次のオーナーさんいい人見つかりますように。ありがとうNikon、きっとまた戻ってくるから。
X-T4 × ウルトロンで春を迎える。
(ポチった反動で人格変わりました。)
やってみます、富士フィルムでJPEGスナップ。これからもスナップ撮影がメインの畑であることは確定しているので、軽い機材とマニュアルフォーカスが写欲をどれだけ高揚させるか試してみたいのです。名高いフィルムシュミレーションが自分の肌に合うかどうかの検証もしたいです。1番大切な写真のアガリはこれから確かめます。
最後に蛇足ですが私はやっぱり日本メーカーが好きですわ。今回選んだ2社、富士フィルムもコシナも国内に工場のあるメーカですから。木村伊兵衛の言葉を借りれば「粋なもんです」ですよ。こんなご時世だからこそ応援したいっす。日本のカメラ・レンズメーカーが元気なうちに買っておこう。そう思った次第です。
ええ、もう完全に日記化している記事ですが最後までお読み頂きありがとうございました。次回からは早速X-T4で撮った写真が並びます。乞うご期待!以上、5402文字の言い訳感想文でした。
では諸君、良き沼LIFEを!かしこ。
ブログ管理人:isofss(イソフス)
※追記。その後、珍道中をへてX-T4とX-E4を同時に使う機会に恵まれました↓