老舗メーカーの意地を見た。そう表現すべきだろうか。俄に舞い降りたNikonのフラッグシップZ9・ファームウェア3.00。特筆すべきは動画撮影時におけるハイレゾズームの登場だ。その能力を普く引き出せるレンズとして私はNIKKOR Z 28mm f/2.8を推したい。いやはや撒き餌とて侮るなかれ。相性すごいから!
ハイレゾズームとは?
それは動画撮影時にFXレンズの焦点距離を2倍まで・画素数を変えないままズーム出来る機能のことだ。真っ先に思いつくのは単焦点レンズの利便性が爆上がりするであろう恩恵。単焦点なのにズーム出来る!という機能をチートと言わずしてなんと表現しよう。本来は焦点距離を変えられない不便さと引き換えに小型軽量を実現した単焦点レンズ。それをボディ側の力技でズームしても実用上問題ない世界になってしまった。すごい。
Zレンズあってこそ。
そういえばZシリーズが発売された2018年、Nikon Fan Meetingでもらったムック本にこう書いてあったことを思い出した。
仮にカメラの交換レンズに使われている1枚のレンズを巨大化して、東京ドームの大きさにしたとします。その時検出される凹凸は、人間の毛髪1本の太さにも満たない、ごくわずかな誤差の範囲に収まります。
MIRRORLESS REINVENTED
昨今Z9のポテンシャルばかりに目を奪われがちだが、Z純正レンズの光学性能があってこそハイレゾズームのような技術に難なく描写が追いつくというのは夢のある話じゃないか。我々が手にしているレンズは伊達じゃない。すごい。
持ち運べる最強動画機。
話を戻すが、私が撒き餌レンズ NIKKOR Z 28mm f/2.8を動画レンズとして推す理由を綴ろう。まず第一に(1)小型軽量であり、(2)マルチフォーカス方式を採用しているのでブリージングにめっぽう強く、(3)Z純正レンズの中で最安値クラスであることだ。ハイレゾズームとの相性の良さに関しては(4)実質28-56mmのズームレンズになること。(5)F2.8通しで使えること。(6)手ぶれ補正はZ9ボディ側に任せられること…等が挙げられる。正直(2)〜(6)までの条件は本家ズームレンズでも満たすことが出来る。潰しが効かない要素は(1)だが、これについては下記の写真を見て頂くのがよろしいだろう↓↓↓
縦グリ一体型のZ9+Z28mm単焦点レンズの組み合わせが収納出来てしまうのだ。フラッグシップ機と標準大三元(っぽい)レンズを持ち歩けてしまう。本来動画撮影に適しているであろうZ 24-70mmのF4やF2.8大砲文鎮を持ち出さなくても遜色ないのだ。すごい。
しかもまだスペースに余裕があるぞ。財布とスマホくらいは楽に入る。「Z9自体が重いじゃないか」…だと?その問題は筋力で解決し給え。筋肉は全てを解決すると偉い人も言っている。
ハイレゾズームの死角。
敵を知り己を知ればなんとやら…だ。万能に思えるハイレゾズームの弱点も明記しなければフェアとは言えないだろう。詳しくはNikon公式から出ているファームウエア3.00の補足説明書11p(ダウンロードページはこちら)に記載があるが、際立ったものをピックアップしてみよう。
▲:AFエリアが固定される。
補足説明書を読んでいなかった私はここで狼狽してしまった。そう、ハイレゾズーム起動時はAFエリアがオートエリアAFに固定されてしまうのだ。瞳AF系の認識機能も使えない。ズーム機能と引き換えに失った生贄と言えよう。細かなフォーカスの追い込みはMFで対応すればよいだろう(…と言いたいところだったが↓)
▲:MFとハイレゾズーム併用ができない例
ちょっとややこしいが聞いてほしい。(1)ハイレゾズームをONにし、(2)カスタムボタンの設定でコントロールリングにハイレゾズームのズーミングを割り当てている場合、かつ(3)Z28mmのようなフォーカスリングとコントロールリングが各々独立していないレンズを使う場合は、(結果)MFとハイレゾズームを同時に使うことは出来ない。
(1)-(3)の条件が揃うとコントロールリングの挙動は、AFモードの時はハイレゾズームとして動作し、MFモードの時はフォーカスリングとして動作する。フォーカスモードを切り替える必要が生じるのだ!しかし解決策はある。同時に使いたければ(デフォルト通り)ズーミングをマルチセレクターで行えば良い。
▲:ハイレゾズームは動画用である。
端的に言うとスチル版ハイレゾズームは存在しない。画角が重要な世界において、ましてフラッグシップ機所有者に甘えは許されない。スチルにはDXクロップがあるではないか。しかもver3.00からFX/DXの切替がカスタムボタン設定で一発切替に調整された。DXクロップ警告表示をONにしておけば画角の戻し忘れも防ぐことができる。すごい。
まとめ。
幾ばくかのトレードオフを甘受すれば最強マシンで動画が快適に取り放題になるのだが、いかがだろうか?…ん?バリアングルじゃないから自撮りに不向きだって?分からないな、それはそれで外部モニター沼を楽めるじゃないか。肝心なのは向こう数年に渡って世界最高峰レベルの快適撮影体験を味わえる事実なのだよ。すごい。
さて、この記事を書く前にハイレゾズームに接した私の魂の叫びをYouTubeで投稿する予定なのでお時間ある方は是非おかわりされたし。さぁ動画全盛期時代にフラッグシップ機のチート機能を堪能しよう。Nikonユーザーに幸あれ!
ブログ管理人:isofss(イソフス)