発売開始は1972年。Nikonの大衆カメラNikomat EL。ニコマートELと呼ぶらしい。このフィルムカメラは70代の大先輩から(ほぼ永遠に)お借りしているものだ。ありがたい…。状態は良く、今でも普通に写真が撮れる。Nikonのものつくりは堅牢の一言に尽きる。記録がてら、ここにニコマートELの全容を綴っておこう。
1.ニコマートELの中身。
大衆カメラといっても当時の給料2〜3ヶ月分の価格だったらしい。先輩はどうやってお金を工面したのだろう…。さて、ググってきたニコマートELの情報を並べてみよう。今では当たり前の絞り優先モードがこのニコマートELで初搭載されたということで、大変おめでたいカメラだったようだ。
- 1972年発売。
- フルメタルボディ。重厚感ハンパない。
- Nikon初の電子制御シャッター。
- 非Aiレンズで絞り優先モードが使える。
- ファインダー視野率:92%
- ファインダー内にTTL露出計がある。
- シャッタースピード:最速1/1000秒
- 電池なしの時は機械式シャッター1/90秒で動く。
- ストロボ同調:1/125秒
- 電池はシャッターボックスの中にある。
- 電池:4LR44、下記参照。
2.外観と各機能。
古いフィルムカメラの魅力、それはシンプルさではなかろうか。やれHDR、やれタイムラプス…そんなものは皆無だ。とにかく写真を撮ることに特化している構造だ。こういったものづくりを見ると、いかに今の時代がごちゃごちゃしているのかを思い知る。さて蛇足はこの辺りにしてカメラ上面から各機能を見ていこう。
カメラを手に持った状態で上から覗くと露出の3要素(シャッタースピード・絞り・フィルム感度)が確認できるようになっている。シャッタースピードダイヤルの「A」はAutoのことで、Aにすると絞り優先モードになる。私もスナップ撮影時は絞り優先モードで使っている。めちゃくちゃ便利だ。測光は中央重点測光のみなので、被写体を画面端に持ってきたいときはマニュアル露出にしたほうが安全。フィルム感度は装填したフィルムに合わせて自分でダイヤルを合わせておく。ここを間違うと露出計の結果も狂うから危険だ。今で言うISO感度が昔はASAだったあたりも面白い。
ニコマートELはFマウント時代の非Aiレンズが使われていた時期のカメラだ。なのでレンズにオートフォーカス機能はなくマニュアルフォーカスでピントを合わせることになる。レンズ装着時には絞りをF5.6にしておくことと、レンズのカニの爪をカメラの絞り連動レバーにひっ掛けてガチャガチャと装着しなければならない。初めてお使いの方は「ニコン ガチャガチャ」でググって確かめられたし。
続いて背面。バリアングル液晶ではない。そもそも撮った後に写真を確認できない。分かってはいるがスナップ中にソワソワが止まらない。背面左上にある白いボタンを押すと隣のオレンジのランプが点灯する。ここで電池の残量確認ができる。電池がなくなると機械式シャッターで1/90秒固定になるらしい。ファインダー内の露出計も使えなくなるから完全にマニュアルカメラになる。電池は(切れた経験はないが)どれくらい持つのだろう?…というか、電池が切れても文鎮化しないカメラということが素晴らしい。ちなみに、古くなっていたファインダーのアイピースだけ現行品に換装している。Nikon純正のFAアイピースが一致するという情報を元に購入したのだが、確かにピッタリ装着できた。接眼部もゴムなのでメガネに優しい。
あと、ファインダーの視野率が実は92%しかないのは撮ってる時は忘れがち。現像した写真はちょっと広く写っているのだろう。(その頃にはそれすら忘れているのだが。)ファインダー倍率は0.8倍で非常に大きく見える。ただし完全にマニュアルフォーカスなので撮影者の目の良さはピント精度に直結すると思う。
前面にも必要最小限の機構が備わっている。タイマー機能も使えるのだが、流石に中のバネがヘタッているらしく、ジジジジジジ(え?)…ッジ(え?)…ガシャーン(今かーい!)、とレリーズが唐突なパルプンテ仕様でタイミングは極めて計りにくい。また、このカメラには絞り込みレバーがある。「古いカメラなのにファインダーが見やすいなぁ!」と感心していたのだが(よくよく考えると開放測光なので)ファインダー越しに見る状態では常時絞り開放でピントの山は見やすいカメラだった。被写界深度を確認したい時に絞り込みレバーを押すと実絞りになってくれる。
ボディ側面にはシンクロターミナルもある。手持ちのストロボに繋いでみたら普通に同調してくれた。堅牢すぎるやろNikon…。ちなみにストロボ同調速度は1/125秒。
底面にはフィルム巻き上げボタンがある。ここを押して、軍幹部の巻き上げレバーをグルグル回すとフィルムをパトローネに戻すことができる。
ミラーボックス内に電池!?
なんとも独創的な仕様だ。すぐ奥には超繊細なシャッターも鎮座しているので作業は慎重に行おう。マウント内の上端に+ネジが見える。ここを外してファインダースクリーン清掃を行なっている記事も見つけたが…私は怖くて触っていない。時折、古いカメラやレンズの点検を受け付けるNikonの修理サービスのメールが届くので、タイミングが合えば出してみたい。(いくらかかるのだろう…。)電池はAmazonで買える。汎用品で使い続けられる構造って素晴らしいと思う。これだからNikonはやめられない。
3.いざ実戦投入。
この記事を書こうと思ったのも(デジカメの機材入替中で手元に今カメラがない状態で)久々にニコマートELに現役復帰してもらったことがきっかけだった。早速スナップ撮影に持ち出しているのだがこれが楽しくて楽しくて。まず(1)OVFの楽しさ。ここに理屈などない。(2)ノーファインダー。場合によってはウエストレベルでパチっとシャッターを切るだけの時もある。画像の確認なんてできないので数秒後には立ち去っている。まさにスナップシュート。(3)甲高いシャッター音。カッキーーンッ…と鳴る。シャッターっぽくないところがまたイイ。(4)フルメタルボディ。重さは量っていないが正直ちょっと重いと感じる。でも重厚感と所有欲は現代のデジカメに真似できない魅力だと思う。デメリットがあるとすれば(1)ローアングルの時はさながら不審者。地面に寝転んでOVFを覗き込んでいる時に通報されないか心配。(2)身につくようで身に付かない露出感。Exifデータは無い。現像後の写真を見ても撮影時の露出設定などまるで覚えていないから。(3)自力で水平出し。電子水準器に慣れたツケがここで露呈である。総じて、いきなり下手くそになった気分。
フィルムを現像に出した後、仕上がる写真は(プリントせずに)デジタル化してiPadに取り込むことが多い。今までは現像時に写真データをCDに焼いてもらうオプションを使ってきたが…うーん、せっかくデジカメ持ってるんだし自分でフィルムのデジタイズもやっちゃう…?と言う話はまた次回。
最後までお読み頂き誠にありがとうございます。装着しているレンズに関しては別記事でまとめておりますので是非。では諸君、良きフィルムLIFEを!かしこ。
ブログ管理人:isofss(イソフス)