こんなにドタバタなプロモーション記事があっただろうか!? 本レンズが先行レビュー用に届いたのは4日前。発売日が決まったら連絡を頂けることになっていた。翌日からスナップ写真を撮り始めた私としては1000枚くらいは撮らなきゃなと思っていたが、今日X(Twitter)を見ていたら公式さんが「本日発売!」とアナウンスを出していた。おいおいおいおい待て待て待て待てwww
癖強めな開放F1.7
こちとらまだ200枚しか撮っていないのよ。面白いではないか!こういう状況は嫌いではないぞ。きっと連絡を忘れているであろう担当さんは今ごろビールでも飲んでいるかもしれないが、私としては発売日にせめてブログ記事だけでも投稿したいので飯も食わずに駄文を綴っている。
さて本題に入ろう。その本日発売のレンズとはPergear 25mm F1.7である。APS-C用のMFレンズだ。画角は換算37.5mmとなる。同じ名前でF1.8という製品があったので今回は2代目なのだろう。まず結論を述べる。びっくりするぐらい安い!この記事が商品提供を受けたプロモーションであること差し引いてもこの価格は素晴らしいと思った。新商品にも関わらずPergear公式HPに載っている過去の数多のレンズより安いのだ。この前提で以下の話を聞いてほしい。
まず当記事でご覧頂いている写真は全てJPEG撮って出しである。当たり前だ、レンズテストなのだから。素っぴんを見せてもらおうではないか。プロモーション記事ではあるが忖度なく最初から弱点を申し上げよう。最大のボトルネックは逆光に甚だ弱いことだ。チー牛を煮詰めて出汁にしたくらいどうしようもない。自分でも何を言っているか分からないが推敲している時間はない。とにかく今日中に記事を投稿したい。ダメということだけ伝われば良い。
↑百聞は一見に如かずなのだ。開放F1.7の時に正面方向に光源があるとフレアでコントラストが一気に下がる。現代レンズの超絶コーティングに慣れてしまった我々にとっては新鮮さすら感じさせる耐性の無さだろう。耐性が無さ過ぎるという意味できっとチー牛というフレーズが朧げながら浮かんできたのだと思う(それはどうでもいい)。
↑この写真は(1)フレアによるコントラスト低下、(2)開放時の四隅の周辺減光、(3)歪曲収差の少なさ…などを垣間見ることができるハイブリット作例である。ちなみにカメラはNikon Z9をDXクロップ(APS-C用)で使っている。ピント拡大を半押し解除できるようになった恩恵が効いている。ミラーレスカメラはなんて偉大なんだ。なお当レンズはNikon Z / FUJIFILM X / Canon RF / M43 / Sony E の5マウントで展開されている。
街角スナップでもコントラスト低下は発生する。↑この写真のように曇り空が入るだけで画面全体がぼんやりするのだ。開放時に普通の描写を求めたいなら光源を完全に切らないといけない。それは結構難しい。なのでこのフレアを味として受け入れる方がストレスがなくていいと思う。
APS-C用と言っても開放時のピント幅は薄い。ましてMFレンズなのでガチピンを取るのは楽ではない。今時のカメラはISO感度を上げてもノイズ処理でどうにかなる場合が多いので別に無理をして絞りを開ける必要はないと思った。あくまでもいなたいオールドレンズ的な描写がほしい時に開放を使うのがよいだろう。この辺りは後ほど詳しく綴ろう。
この写真はピクチャーコントロールをピュア(30%適用)で出力している。キリッっと写ってくれない開放描写を逆手にとって色捻りで遊ぶのも手だと思う。FUJIFILMのフィルムシミュレーションと相性抜群ではなかろうか。Nikonのクリエイティブピクチャーコントロールはそのまま使うと濃過ぎるので出力調整が必要だ。
別人なF5.6
スナップ2日目。今度はF5.6まで絞ってみた。びっくりだ。まるで別人のようにシャキッと写るようになった。光源が画面内に入っても荒れないし、細かい線も難なく描いてくれる。フリンジも気にならない。一体何が起こったというのだ!?
モノクロームを試してみるとグレーのトーンが気持ちよく出た。もちろんJPEG撮って出しである。日中屋外であればF5.6は露出のバランスもいい値なので、これは実用的ではなかろうか。
ここで1つ、物理的なメリットを綴っておこう。実はこのPergear 25mm F1.7は絞りのクリック感が強い。これは非常に良い。カバンの中で勝手に回転している…みたいな心配がない。過去にVoightlanderのデミシリーズを買った時に憂いていたのがこの点だ。絞りのクリック感が極端に弱かったデミに比べると価格が1/8のPergearは善戦していると言えるだろう。
この辺りの操作感で手を抜かずに、しかも金属鏡筒で165gというパンケーキ仕上げなのだから天晴れだ!しかも安いときた。これはPergearがスナッパー向けに作ってくれたスチル用レンズで間違いないだろう。おっと…褒めすぎだろうか?
まだあるぞ。このレンズ、最短撮影距離が20cmなのだ。めちゃくちゃ寄れる。寄れるは正義だ。きっと日本のお固い純正メーカーだったら「寄って描写が乱れるなら寄らせない」と判断するだろうがPergearは違う。「寄れるところまで前群繰り出せるようにしておいたヨ」とでも言わんばかりに寄れる。これはありがたい。(※個人の感想です)
気持ちが高まったところで不都合な真実を1つ書き足しておこう。実はフォーカスリングの回転角が45°しかない。20cmから無限遠までのストロークが非常に短いのでフォーカシングがピーキー of ピーキーなのだ。ピントの山がギュンギュン前後するイメージだ。先ほど「その描写が欲しい時にだけ開放を…」と言っていた理由はここにある。電子接点のないレンズなのでファインダーに投影される景色は実絞りとなる。つまり絞りが開くほどピント合わせのハードルが上がるのだ!ピーキングはもはや当てにならないのでOFFにした。
雑多に書き殴ってしまったが、簡潔にまとめるとF5.6あたりが描写もフォーカシングも落ち着いて心地がよい…といったところか。絞ることに抵抗がない方にはオススメのレンズだ。申し訳ないが間のF2.8やF4の感想は間に合っていない。なぜならば…(冒頭に戻る)。
相当頑張ったであろう造形。
最後に造形についても綴っておこう。実際手に取ってみたこの金属鏡筒のレンズは、1万円を切る価格帯でよくぞここまで作ったなと称賛を送りたいビルドクオリティであった。はっきり言うとVoightlanderには遠く及ばないし、おそらくオールドNIKKORをオマージュしたであろうデザインも揚げ足を取ろうと思えばいくらでも取れる詰めの甘さはある。例えば測距メモリ(もちろんプリント)は色分けされていないのでそもそも意味を成していない。知っている人から見れば小手先デザインに感じるかもしれない。これが3万円だったら怒っていたと思う。
だが、こやつは1万円未満なのである。それを忘れてはいけない。先祖のF1.8レンズを知っている人であれば新型F1.7のビルドクオリティが二階級特進くらいの評価を受けてもおかしくないことはご理解頂けるだろう。この円安の最中、よくぞここまで価格を抑えたものだ…。
誤解を恐れずに申し上げると、私個人としては買う理由が金額ならやめておけ信者だ。しかしこのレンズは別。大人のお小遣いでパッと1万円出せる人は買っていいと思う。特にレンズ情報手動設定でレンズ名を任意にExifに記録できる機種をお持ちの方にはオススメだ。本来のAPS-C機ではこの機能が省かれている場合が多いが(ここはちょっと本末転倒だが)、一部のフルサイズ機でこの機能が使えると中華レンズの弱点がいくつか消える。これに賛同頂ける方はまさにお誂え向きだと言えよう。
もちろん200ショット程度では序の口だろう。アナザーカット編として改めてファーストインプレッションをYouTube動画で喋る予定だが、その後も当面の間はZ9との組み合わせで毎日写真を撮っていこうと思う。
それにしても驚いた。一皮剥けた中華レンズを見せてもらった。この調子だと国内MFレンズを追い越す日も遠くないのではなかろうか。いいぞもっとやってくれPergearさんよォ!