Nikon初のフルサイズミラーレスカメラが発売されてから2年が経つ。今年は後継機のZ7ii・Z6iiも出たが、ミラーレス戦国時代の中ではSONYに水をあけられたという話はよく聞くし、ことAFに関しては私も同意する。だからと言って使えないカメラではない。初代初代と揶揄されるNikon Z6の仇を打つべく暗所&動体という過酷な卓球の撮影に挑戦してきた…のだが、蓋を開けてみると大切なのはレンズだったという結果になったお話。いざ作例と共にご覧あれ。
はじめに。この度、撮影にお邪魔したのは福岡県総合卓球選手権大会だ。感染症対策の一環で得点板を使わずに審判が指で点数をカウントする様子を目にした。今年の特異な状況の中で、出来る限りの対策をしつつ催物を行う英断に敬意を表したい。なお、撮影者(私だが)は普段は(当ブログの名に相応しく)近所をウロウロ撮影している怪しい人物であり、スポーツ撮影はズブの素人である。言い換えれば卓球撮影初心者が初代Z6でどこまで成果を上げられるかを検証しようという企画でもあった。なお撮影後のトリミングはしていない。枕はこのくらいにして写真を見てみよう。
1.卓球撮影の設定解を探る。
普段からスポーツを撮っておられる方には愚問かもしれないが、当方は手探りなのだ!(これが楽しかったりする。)まずはシャッタースピードを1/1600秒から始めた。レンズはNIKKOR Z 24-70mm f2.8 Sだ。しかし絞り開放だと被写界深度が足りないと思いF3.2から始めた。(いや…ほぼ変わっていないが。)
実は↑この写真、2試合目なのだ。なにせ初体験の世界である。1試合目はあれよあれよと言う間に終わっていた。最初のAF設定はオートエリアAF内の瞳AFを選んだが、70mm側のこの距離感では瞳AFは動作せず終始顔認識でのAFだった。ただし、顔を掴むまでは前に後ろにピントは抜けまくっていた。これは如何ともし難いと判断し、2試合目からは中央一点シングルポイント×AF-C×親指AFに切り替えた。自ずと日の丸構図になる様子が写真に表れている。それにしても卓球撮影で選手の対面にポジショニングした場合、24−70mmでは画角が広過ぎる。会場では試合が何試合も同時に行われているのでどうしても(写真としては)余計なものが入ってしまう。こちとら設定で四苦八苦しているので構図に構っていられる余裕はない。嗚呼、70-200mmが欲しくなってきた。
2.ピント精度とノイズ耐性。
撮らせていただいているチームは予選2試合を勝ち抜いて決勝トーナメントに進んでいた。私も多少は落ち着いており、シャッタースピードを少し下げてノイズを抑えようと調整を図っていた。なお、端からJPEG撮って出しは諦めており全カットRAW現像するつもりだった。(あとで地獄を見ることになったことは言うまでもない。)裏面照射型フルサイズセンサー搭載のZ6であるとはいえ、常日頃からiso:100信者の私にとっては…iso:4000でもノイズは多いと感じてしまった。待て待て、そういう決め込みは捨てなければならい。ここはスポーツの戦場なのだから。
3試合目は撮影したい選手側にポジションを変えてみた。押してダメなら引いてみようの精神だ。横顔でも顔認識AFは動作する。顔認識が外れても(手前に他の被写体がいないので)選手のユニフォームあたりにオートエリアAFが食いつく。ピントの歩留まりは悪くないし、まぁ良くもないが。で、思い切ってマニュアルフォーカス&置きピンにしてみた。純正レンズの場合、マニュアルフォーカス時もフォーカスポイントは残る。そしてピントが合う時だけフォーカスポイント枠が赤くなる。意外とこの方法も通用した。
卓球は弾速の早い競技だ。Z6の高速連続撮影(拡張)を持ってしても1チャンス2〜3枚程度しか時間がない。この時思った。試合の流れや選手の動きを把握・予測して撮影に挑まなければならない!プロのスポーツカメラマンはこの技量が半端ないからプロなのだろう。機材×撮影技術の掛け算でアガリが決まるのか。これからスポーツ雑誌を見るときの目が変わりそうだ。
縦ばかりで撮っていたが次第に横構図にする余裕も出て来た。もう少しレンズを右に振るべきだっただろうか?玉が入っていたらなお良かったが…後悔先に立たずとはこのことだ。もちろん改善すべきは私の腕であってレンズの描写は申し分ないのだ。使いこなせるようになりたい。
3.画角が足りない!
しかし70-200mmは持っていないのだ。…ドラえもんにお願いしたら1973年製のZoom-NIKKOR Auto 80-200mm F4.5を出してくれた。マニュアルフォーカスである上にフォーカスリングはスカスカ、レンズ内も少々曇っているが…背に腹は変えられない、画角を優先しよう。
卓球撮影にマニュアルフォーカスレンズを持ち出すなど笑止千万、百も承知だ。しかしだ、かつてはこういった機材で皆撮ってきたのだろう。フィルム時代の先人たちの努力には頭が下がる。Z6ではマニュアルレンズでもボディ内手ぶれ補正を動作させられるが、そのためにはメニュー内で「レンズ情報手動設定」をしなければならない。当然ズームして焦点距離を変えてしまうと手ぶれ補正の挙動はおかしくなるので、今回は200mmでズームリングを固定して撮影に臨んだ。
開放F4.5なのでかなり暗い。正直なところRAW現像時にかなりシャドーを持ち上げている。200mmなので被写界深度も浅くなっているし、色のりも良いとは言えない。だた…この画角は最高だ!これでZ純正レンズだったらどうなるのだろう?つい先日27万円の24−70mmを買ったばかりなのに、もう70-200mmが欲しくなってしまった。
気づけば決勝戦になっていた。卓球の知見を持ち合わせていない私でもトーナメントが進むにつれて試合内容が濃くなっていく様子を肌で感じた。シャッターチャンスが多くなったことは言うまでもない。スポーツに打ち込んでいる人たちへの敬意が深まった。精進する姿というのは美しいものだ。
4.カメラよりもレンズが重要。
初代Z6でどこまで暗所&動体を撮影できるか検証するつもりだったのだが、この日のベストショットはAF性能に無縁な40年前のオールドレンズで撮ったものだった。結局レンズがものを言った。もちろん、昨今のカメラのデジタル化・高性能化・ミラーレス化がもたらした恩恵は大きいと思うし、Nikonというメーカーに関していえば(売り方は下手だと思うが)描写性能への意地と製品の堅牢製には特筆するものがあると感じている。その上でだ、写真撮影でより重要なことは経験を重ねることではないだろうか…。その経験はレンズの画角感で築かれているのだと肌身に感じた1日だった。初代Z6に完璧を求めるのは間違っていた。他者と比べてスペックをどうこういう前に、手持ちのレンズを使い倒す腕を身につけたい。
あとがき。
なんと撮らせていただいたチームはそのまま優勝してしまった。勝ち進んでくれたからこそ撮れた写真がいくつもあり、良い機会を頂けたことに感謝のほかない。また、オフィシャルではないカメラ小僧の存在を受け入れてくださった大会関係者に謝辞をお伝えしたい。実は途中で関係者の方に声をかけられる一幕もあったが、個人的に選手を撮りにきていることを説明し、納得いただけたのはありがたかった。最近のニュースでも取り上げられている、女子陸上競技を己の欲のまま盗撮している阿呆カメラマン徘徊事件を思い出す。一部の逸脱した輩のおかげでカメラ好きマン全体の肩身が狭くなっていることは本当に腹立たしい。この日も高校生・大学生の女性選手がたくさん参加されていた。しかし撮る気にはなれなかった。それが普通だと思う。
ミラーレスカメラの良い点。
結局最後にカメラボディの話をしてしまうのだが。Z6のポジティブな一面を綴って終わりたいと思う。今回撮影しながらつくづく思った、EVFが美しいのだ!両眼視してみたが肉眼に勝るとも劣らない印象だった。EVFが美しいのでマニュアルフォーカスレンズだって使い易い。個人的にはSONYより好きだ。しかもEVFを除いたまま画像再生も出来ることは一眼レフカメラよりも優れている。連写時に1カットごとに全体の色がバラける時があったのだが(ホワイトバランスはケルビン指定で固定していたので)これは恐らく会場の照明のせいだろう。フリッカー低減ONが効いていたのか、妙な色筋は入らなかった。あとはAFの食いつきがαシリーズに肉薄すれば…!頑張れNikon!応援しているぞっ!
さてさて80-200mmと同世代の55mmレンズの記事も書いてみた。是非是非そちらもご参照あれ。
では諸君、よきスナップLIFEを!かしこ。
ブログ管理人:isofss(イソフス)