スマホ全盛時代。今や、いつでもどこでも誰もがカメラマンになれる。しかし、特異な2020年という年を記録しようと奮い立つ人はそうはいないと思う。まして写真集として世に放つなど(いい意味で)どうかしている。

写真家、初沢亜利。

なんてことだ!私なりの感想はこの一言に尽きる。この写真集、縦の写真が一枚もない。全て横構図なのだ!私の知見が足りないだけなのか、こんな写真集は見たことがない。

さて、私はこの写真家とは無縁の一読者に過ぎないが、事のつまり、この写真集の購入を是非ともおススメしたい。構図の話は別にしても、この本、面白いのだ!センシティブなテーマを扱っているはずなのに…どこかツッコミどころのあるシュールな匙加減が随所に散りばめられている。例えば、閑散とした駅のホームでカップルが情熱的なキッスをしている写真がある。(キッスて言うな!)よく見たら男の方はマスクをズラしてシているではないか!リスクよりも愛を取ったのか?いや愛する人を危険に晒しているではないか!いや待て、これどうやって撮るんだ?…この一枚でご飯三杯はおかわりできそうだ。

この写真集に興味を持った方に合いの手を差し伸べたい(いや差し伸べるのは私ではないのだが)。写真熱に油を注ぐYouTubeチャンネル「老人と文学社」の生放送に初沢氏がゲスト参加されている動画がある。5時間の長尺対談にもかかわらず面白いので…寝る前には再生しない方がよいだろう。なお、お名前から女性っぽさを感じる初沢氏であるがメタメタのおじさんである。変な期待はなさらぬよう。

写真が撮りたくなる本。

スナップ写真は楽しい。見ることも、撮ることも。時に都合の良し悪し関係なく記録してしまう凶暴性もあるが、それが生きていることを実感させてくれる温度だとも思う。いつか軒下で温かいお茶でも飲みながら「あぁこの年は大変だったな」と人生を振り返る時…傍らにこの写真集があるのかもしれない。

では諸君、よきスナップLIFEを!

ブログ管理人:isofss(イソフス)