誰しも、沼の歴史の一つや二つ、あるものだ。私にも、あなたにも。

10年一昔とはよく言ったものだ。初めてカメラを買ったのは2010年。NikonのCOOLPIX P100という一眼レフ風カメラだった。恥ずかしながら、当時これを本物の一眼レフだと思って買った。これまた当時勢い凄まじかったジャパネットたかたで買った。当時お付き合いしていた彼女とのリア充写真を量産すべく買った。

そして全ては過去になったのだ。唯一、カメラ沼への道筋だけを残して。

何も知らずに買った1台目。

写真を撮りたい一心で初めて買った人生初カメラCOOLPIX P100。当然だがスペックなど興味も知見もなく、ただひたすらシャッターを切るだけの(いわゆる)JPEG撮って出し運用だったがそれでも十分楽しかった。目的があれば人は幸せになれるのだ。

Nikonのアーカイブでカタログスペックを確認してみた。これが面白い。10.3メガピクセルの裏面照射式1/2.3型センサーを搭載していたとのこと。今のスマホみたいな性能だ。一丁前に顔認識AFも積んでいる。さらにはSDカードが無くても内蔵メモリーで43MB分は保存できる仕様…よ、43MB??今の感覚で言うとRAWで1枚撮ったら終わるような。また、ミラーレスカメラのくせに撮影時のEVF視野率が100%じゃないのも面白い(97%)。記憶が正しければ20000円くらいで購入したはずだ。冷静に考えると今のカメラの価格が高過ぎなのかもしれない。同時に、現行カメラの性能をここまで進化させたカメラメーカーの技術者の方々へ敬意を表したくなる。

写真には目的が必要だ。

今となっては化石のような代物だが、写真にとって最も重要なのは(スペックではなく)目的だと教えてくれた。1台目のカメラを買った時点で撮りたい人・撮りたいものが明確にあったことはラッキーだったし、おかげで沼に引きずり込まれることになろうとは予想だにしなかったが。

COOLPIX P100を購入してしばらく経ってからのこと。職場の先輩に登山に誘われた。最初は付き合いのつもりで参加したのだが、その登山にカメラを持って行ったことで向こう10年の方向がガラッと変わったと言っても過言ではない。

COOLPIX P100で撮影した久住山山頂付近
大分県久住山山頂付近、2011年。
山頂で喜びの登頂ポーズである。

言葉を失った。

見たことのない世界だった。まるで昨日の出来事のように鮮明に海馬に焼き付けられている。写真はその感動を永遠に閉じ込められる道具だと思う。昨今、Objectification(オブジェクティフィケーション)という言葉を耳にするようになった。どちらかというとネガティブな意味合いで使われる言葉だと思うが…。ただ、これは個人的な見解だが、こと写真においては純粋に的を射た表現だと思うのだ。写真は記録を自分のモノにする手段だと。この時の感動を自分のモノにしておきたい衝動。悪用するか、善用するかは撮り手の目的次第だ。

その後、COOLPIX P100を持って登山に行くことになった。

その後、登山にも没入することになる。もちろんCOOLPIX P100を携えて。

祖母山山頂から景色を眺める。
宮崎県境:祖母山山頂、2011年。

↓ピント外しはNikonのお家芸。なんだか今のZシリーズに通じるものを感じる。道具としては質実剛健なのにソフトウェアがちょっと弱いのも真のNikonユーザーたるもの甘受して朝飯前である。

ピントの甘さがなんともなんともNikonらしい。
大分県:久住山山頂、2012年。

COOLPIX P100を“荷物”と認識したことはない。それもそのはず、このカメラは481gと軽量なのだ。でも正直な所、もっと軽いiPhoneでも登山写真を撮っていた。ガジェットオタクとしてではなく写真を純粋に楽しんでいた時期だったと思う。(以前の記事でも書いた通り)もし人生のベストショットを数枚選ぶとしたらその内1枚はiPhone4sで撮った写真にすると思う。当時ガジェット系YouTuberジェットダイスケ氏が言い放った「その時、その場所にいること。」という金言に深くときめいたことを思い出す。

頂上で最高のご来光となった。
iPhone4sで撮った写真。

カメラ沼の始まり。

こうして無事にカメラ初体験を円満に成し遂げ、ついでに登山という相棒までセットされた暁には「写真って楽しい」と暗示が掛かって当然である。そしてようやくCOOLPIX P100がレンズ交換式カメラではないことに気付く。言うまでもなくレンズ交換式カメラが欲しくなる。ヨドバシカメラに立ち寄る度に後光の差したカメラ売り場が私の耳元で「買え」と囁く。しかし金銭感覚はまだ一般人なのだ。超エントリークラスの5万円ですら尻込みしてしまう。滅相もない高嶺の花だ。

しかし、沼の深みに足を進めてしまうのが人間の愚かさよ。その後160万円ほど散財することになる未来など知らない方が良い。(いや、この程度では沼の先人たちの足元にも及ばないだろうが。)なお、NikonのCOOLPIXシリーズの後継機はスマホ戦国時代の渦に揉まれつつ進化していくことになるが、個人的に興味を持ったのはPシリーズ進化系ではなく防水派生したW150だったりする。例えば子供に1台買い与える用途ならこのカメラは強いと思う。

COOLPIX P100の最期。

三年ほど経った頃。登山仲間の隊員たちにカメラブームが訪れる。1人1台Myカメラを持って山に登るようになっていた。ある隊員には物静かな弟がいた。まだ幼く登山に伴うわけにもいかない。お小遣いだってカメラを買う額に届かない。でも我々の盛り上がりっぷりを言葉少なにジッと見ていたのだ。そんな折、私の手元には既に2台目がある。ここは大人の懐を見せねばなるまい。COOLPIX P100は弟くんの元へ旅立ったのだった。

次回!2台目購入のお話。

では諸君、よき沼LIFEを!かしこ。

ブログ管理人:isofss(イソフス)