前回の動物園でのズームレンズ対決は動物にグッと寄れた望遠レンズ(しかもオールドレンズ)の圧勝で幕を閉じたのだが、実は福岡市の動物園は植物園とニコイチなのである。柵にAFを取られて使い物にならなかった標準大三元レンズに名誉挽回のチャンス到来、延長戦である!植物園に持っていくべきレンズは標準ズームか?望遠ズームか?検証していこう。

標準ズームvs望遠ズーム

レンズのおさらい。左側がNikon Zマウント大三元の一角NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sだ。対する右側がFマウントの老兵Zoom NIKKOR Auto 1:4.5 80-200mmだ。Zマウントへ変換するマウントアダプターを装着して運用する。使いやすい焦点距離勝負という設定でいざ参る!

福岡市動植物園にやってきた。
植物園にやってきた。ちなみに35mm
焚き火と石焼き芋のイベントをやっていた。
焼き芋のイベント。こちらは70mm

1.いきなり結論、出た。

動物園と同様、植物園でも開始早々答えが見つかってしまった。ズバリ標準ズームレンズが超絶使いやすい。それもそのはずだ。被写体である植物が(動物に比べて)とにかく近い、近いのだ。近いは正義だ。24-70mmの焦点距離で十分間に合う。

ススキの立体感がすごい
ススキを逆光で。50mm F5.6
バラの鮮やかさが際立つ。
きれいだ。50mm F4

(蛇足)この薔薇の美しさたるや。デジタルカメラは赤の表現が苦手という話は聞いたことがあったが、下の薔薇の赤色は肉眼ではもっともっと真紅だった。とにかく赤を再現できないかとRAW現像でコントラストを下げてみた。それでも十分ではない。自然界の発色には敵わなかった。

本当はもっと真紅の薔薇だった。
70mm F4

画角の話に戻ろう。いわゆる広角から標準画角をカバーしている24-70mmの画角なら植物園はコンプリートできると感じた。細かい調整は撮り手自身で寄り引きを行えばよい。日中屋外という環境を考えるとF値可変式のコスパの良いズームレンズでも十分に対応は可能だ。被写体をボカしたい場合は、寄るか・24-105mmの105mmを使うか・24-70mm大三元で絞りを開けるか…単焦点レンズに持ち替えなくても選択肢はある。

チューリップが並び咲く。
70mm F4
ポピーの蕾だ。
妙にリアルなポピーの蕾。70mm F4

2.温室にやってきた。

さて、植物園内の温室にやってきた。今は12月だが熱帯地方の植物を鑑賞できる。私は植物に詳しくないので花を見ても名前など分からない。撮影ついでに立て札も記録しておいたので名前も載せておく。(撮り忘れ多し。)異様なほどコントラストが高いのはカメラのせいではなく、植物の色がガチで濃かったからだ。恐るべし自然界。

ウナヅキヒメフヨウの赤色。
ウナヅキヒメフヨウ。70mm
熱帯の花のようだ。
12月によく見かけそうな葉っぱ。70mm
美しい小さな花。
名前分からないが可愛い花。70mm

被写体が比較的小さいので望遠端70mmで最短撮影付近で寄って撮ることが多かった。NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sの仕様書を見ると最短撮影距離はズーム全域で38cmとなっているので望遠端の方が被写体が大きくなる映ることになる。最大撮影倍率は0.22倍で比較的寄れるレンズだ。Zマウントのレンズの中には2つのフォーカスユニットを別々に動かすマルチフォーカス方式を採用しているレンズがあり、標準大三元もそれに該当する。これが非常に良い働きをしているらしいのだ。特に被写体までの距離によって画角がブルブルするフォーカスブリージングが非常によく抑制されている。(全群繰り出しレンズと比べるとよく分かる。)ただし鏡筒は肥大化するそうで、Zマウントが一様に寸胴ぼってりレンズ群になっているのも頷ける。

日本ではなかなか見ない植物。
見たことない植物。70mm
ビカクシダと言うらしい。
ビカクシダと言うらしい。70mm
大きな葉っぱに水滴が1つ。
フォトヨドバシごっこ。70mm
オンシディウムという花。
オンシディウム。70mm

気がつけば温室に入ってから70mmでしか撮っていないような…。(言い方を変えると、ズームレンズでも画角感を鍛えることはできる!)なお、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sのズーム機構は縮めて24mm、伸ばして70mmとなる。沈胴式の小三元24-70mmF4とは違い、縮めた状態でいきなり24mmスタートできるのはGOODだ。防塵防滴とはいえ70mm側では全長が伸びる。伸縮を繰り返すことで鏡筒の中に埃が入らないか心配なのだ。さながら娘に変な虫が寄り付かないように心配する父親のようだ。でもそのおかげで収納時にコンパクトになる恩恵もある。トレードオフなのだな。

竜神木綴化(リュウジンボクテッカ)
70mm

竜神木綴化とやら…読みが分からない。ググったらリュウジンボクテッカと出てきた。この形相に相応しい名だ、きっと。

赤鳳(セキホウ)
赤鳳(セキホウ)70mm
サボテン、これは痛そう。
痛そうなイメージを出したくてF8、70mm
美しいサボテンの造形
美しいデザイン。70mm
食虫植物だ!
げげ、食虫植物。70mm
睡蓮の仲間だろうか?
睡蓮の仲間だろうか?50mm

寄り引きが難しい水辺ではズームレンズが活きる。久々に50mmに戻してみた。

3.紅葉スナップ。

しまった、望遠ズームを忘れていた!温室を出るとあつらえたかのように紅葉が出迎えてくれた。ここでレンズ交換しよう。主題と背景を探して切り抜く作業には望遠ズームは非常に使い勝手が良い。

イチョウと紅葉のコラボ。
200mm

コントラストが低いのはレンズ内のクモリのせいだと思う。40年以上前のレンズなのだから致し方ない。現像でエモい方向に捻ってしまえば大丈夫だ。…いや待て、おじさんのエモいは若者のそれとは似て非なるものだが果たして大丈夫だろうか?急に自信がなくなってきた。

一部を切り取るなら望遠レンズが良い。
200mm
花の集まりだって切り抜ける。
200mm

肉眼で見える距離を200mmで切り取るのは楽しい。立ち入れない場所の場合はAPS-Cクロップを使えば300mmにまで伸ばせる。昨今、立ち入り禁止区域を土足で踏むにじる輩や、人通りに三脚を突っ立てる老害の事例は枚挙にいとまがない。腕と機材でどうにでもなるのに。人に迷惑をかけて撮った写真を人に見せて気持ちイイのだろうか?まぁボヤキはこの辺にしておこう。

紅葉が美しかった。
200mm×APS-Cクロップ=300mm
望遠レンズは基本ボケる。
200mm

結論、標準ズームいける。

今回は標準ズームでも十分楽しめた。身も蓋もない本音を言えば大三元NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sでなければならない理由も…なかった!なぜなら、昼間だから明るすぎて絞る・被写界深度が欲しいから絞る・絞った方が描写力が上がるから絞るからだ。写真のゴールがF値に依存しないならば、あとは画角の違いの落とし所だ。同じ場所で撮影した下の2枚を見比べてほしい。

紅葉を切り取る構図。
望遠ズームの200mm
同じ場所で全体を写す構図。
標準ズームの70mm

要は、同じ被写体をどのように表現したいか?が重要だ。写真のゴールから逆算したレンズ選びが出来れば最高だ。た・だ、それが難しい。それが出来れば苦労しない。最初からその境地にいればレンズ沼などに浸ってはいない。そんな貴方に朗報だ。各メーカには広角から望遠までを1本に収めた便利ズームが存在する。私も「そんな初心者が使うようなお手軽レンズ…」と決めてかかっていた人間だったのだが…悔い改めようと思う。実はヨドバシカメラでZマウントのNIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VRを触って目の玉が飛び出そうになったのだ。(1)Zマウントなので描写はエグい。(2)それなりにコンパクトで、(3)お値段も大三元の半額だ。(4)レンズ交換しなくて良い。(5)昼間屋外の撮影はこれでほぼ全域完結できる。外装に高級感はないが欠点はそれくらいしかない。たらればの域を出ないが、24-70mmを買う前に知っていれば24-200mmを買っていたと思う。

さて、ここまでお読み頂いた貴殿がレンズ購入検討中の方であれば、この記事の内容が何かのお役に立てれば嬉しく思う。動物園編がまだの方は是非そちらもご参照されたし。良い買い物となることを切に願い、この記事を終えよう。

では諸君、良き写真LIFEを!かしこ。

ブログ管理人:isofss(イソフス)