エモいだ?シネマチックだ?ボカしたい?一昨日きやがれ!

とまぁ…エッジの効いた暴言で記事を始めてしまった訳だが、流行に水を差すのは歳をとった証だ。今日の主役はこちら、Micro-NIKKOR-P.C Auto 55mm F3.5、Nikonのオールドレンズである。今から50年程前の製品であるにも関わらず普通に使えるMFレンズ。特筆すべきは(エモさとは逆方向の)その忠実な描写だ。モリッと使い込んできたので感想を綴っておこうと思う。

Micro-NIKKOR-P.C Auto 55mm f3.5外観。オールドライクな刻み文字がエモい。

標準画角のハーフマクロ。

Micro-NIKKOR-P.C Auto 55mm f3.5のハーフマクロ近辺で撮った紫陽花

このレンズの焦点距離は55mm。程よく狭い。最大撮影倍率は0.5倍、いわゆるハーフマクロ撮影が可能になるのだが、スナップ撮影のような普段使いであればハーフで全く問題ない。

たんぽぽの接写をMicro-NIKKOR-P.C Auto 55mm f3.5で撮影。

その近接描写が美しいのだ。シャープなピント面から緩やかに蕩けていく背景。近影の描写に力を入れた設計なのだろう…と勝手に想像している。Nikonのマイクロレンズ史の中で開放F3.5シリーズはかなり初期のもので、光学設計はクセノター型らしい。(千夜一夜物語第二十五夜参照)

こんな繊細な繊細な描写もこなすMicro-NIKKOR-P.C Auto 55mm f3.5

マクロレンズの王道は105mm画角だが、軽量コンパクトな取り回しの良さを考慮すると標準画角ハーフマクロという選択はスマートだと思う。実際のところ気楽に持ち歩けた。

凡庸の鏡のような描写。

近影であれだけ艶やかな描写だったのに、中〜遠距離になると違う顔に変わってしまう。とにかくさっぱりしている。「オールドレンズの癖は味だ」みたいなことが言えない。THE 凡庸である。

明るい環境であればMicro-NIKKOR-P.C Auto 55mm f3.5は全然今でも使えるレンズ。

理由はこれだろう。開放F3.5という箸にも棒にもかからない明るさであるため、ほとんどの場面で(ボカすことを諦めて)F5.6あたりまで絞ることが常態化した。必然的にレンズの旨味が1番凝縮される描写になるわけだ。

金属を写すとそのレンズの性質が分かる…気がする。Micro-NIKKOR-P.C Auto 55mm f3.5作例

オールドレンズにありがちな歪曲収差やサジタルフレアが見当たらない。またレンズが奥まった位置にあるおかげで鏡筒がフードの役割を果たしておりフレアやゴーストの心配もない。パープルフリンジも気にならない。無理に大口径にしなかった設計の恩恵で(かつ55mm画角とハーフマクロという要素も関与しているらしいが)均一で忠実な描写力を手に入れたのだろう。

オールドレンズで古い街並みを撮る面白さよ。

同じNIKKOR系標準画角オールドレンズでも、例えばNIKKOR-S Auto 50mm F1.4だと歪曲収差や球面収差がカタストロフしているのだ。レンズ毎に設計思想が違うんだな…というロマンでビールがおかわりできそうだ。

55mmという絶妙な標準画角はスナップには使いやすいと思う。

傾向が分かってしまえば話は早い。このレンズでいわゆるエモい写真を撮影することは困難だが、逆に淡々と日常を記録していくにはお誂え向きだ。(繰り返しになるが)寄れるメリットも付いてくる。撮影のレパートリーが増えるのは良いことだ。

オーバーめに写しても諧調は残ってる。Micro-NIKKOR-P.C Auto 55mm f3.5作例

冒頭の話。最近、年齢を重ねた結果憧れ需要に体が反応しなくなっていることに気づいた。たぶん人生はそういうものだろう。いつまでもキャッキャ言ってられない。盛るな盛るな。繰り返される日常の中にしか真実はない。これはそういう記録にピッタリのレンズだと思う。

いわゆる淡い写真の仕上げも、オールドレンズの楽しい一面だろう。

ある意味で質素な記録しかできないレンズである。精神的にそれを受け入れる度量が試されるし、技術的には何も考えないと何も表現できない画角帯なので逆に難しさすら感じる。使いこなせるかどうかはまさに本人次第だろう。

Micro-NIKKOR-P.C Auto 55mm f3.5のレンズ前玉は鏡筒の奥にあるので、フードなしでも遮光効果は結構高い。

逆光でも随分粘る。オールドレンズなので電子補正の類は使えない。何物なんだ君は!?

Micro-NIKKOR-P.C Auto 55mm f3.5で撮る現代建築。コントラストの高い描写。

もちろん弱点もある。暗いレンズは夜間スナップや室内撮影などでは武が悪い。ご覧の通り今回は専ら屋外撮影だったので不利な状況での作例がない。ボディが一眼レフだったので尚更だ。ミラーレス(Nikon Z6)との組み合わせで撮影した過去記事もあるので参照して頂きたい。当ブログで第三位の閲覧数を誇っているが筆者本人もなぜバスっているか理由は分かっていない。

モノクロで2度美味しい。

古いレンズなのだからモノクロと相性がいいはずだ!…というのは安直な発想だが、実際に白黒現像してみると味わい深くて気に入っている。

ここからはMicro-NIKKOR-P.C Auto 55mm f3.5のモノクロ作例です。

古いレンズで古い街並みを撮影する相性の良さよ。こっちは真実だろう。撮ったばかりの写真なのにまるで昔の写真みたいだ。

古い映画館を古いオールドレンズで撮影。これが楽しい。

1ヶ月ぶっ通しで1本のレンズを使い続けるスナップ撮影。今月の収穫は絞ることを覚えたことだ。絞らざるを得ないレンズだったのは吉だった。よくよく考えればボカす理由がないのにボカすのは芸が無い。それを学べた。

ちょっと郊外に出掛けてオールドレンズでスナップ。

「モノクロだったらどうなる?」と考える癖がついたのも良かった。↑この写真もそうだが、カラー現像時に「?」だったとしても白黒化して「いいじゃん」となることが多かった。その理由を言語化できるまで昇華させるのが次の目標だ。

実はこれはカラー写真なんです。地下街の天井の明かり。

さて、この記事のYouTube版も投稿済で候。是非とも。

まとめ。

結論、Micro-NIKKOR-P.C Auto 55mm f3.5は使い易いオールドレンズです!

ひとえに標準画角ハーフマクロ単焦点レンズの有用性を思い知った。開放F1.8シリーズのような明るさとトレードオフで手にした近接撮影能力は素晴らしかった。派手さは皆無だが淡々と記録ができる汎用性があった。凡庸こそ万能なのだ、ここに尽きる。もし人生で最後のレンズを1本だけ選ぶことになったらこういうレンズを選びたい。50mmに始まり50mmで終わるとは言い得て妙だ。

これだからレンズ沼は楽しい。知らないことを知る喜びがここにはある。小遣いが溶けるのが玉に瑕だが。そんな訳で諸君、良きレンズ沼LIFEを!かしこ。

ブログ管理人:isofss(イソフス)