カメラなんて使わなければただの漬物石。買う前はあれだけワクワクしていたのに賢者タイムが過ぎれば文鎮化してしまうあの蛙化現象はなんなんだッ!…だからって縦グリ一体型ボディを毎日持ち歩くなんて正気の沙汰ではないのですが(汗)。

古の漬物石 D3。

せめて所有しているカメラくらいは使いこなせるようになりたいな…という思いつきで初めた一日一撮。1st seasonと合わせると400日を超えてきたあたりです。いよいよ頭おかしくなって縦グリ一体型ボディを持ち歩いております。こちらは発売開始が2007年の一眼レフカメラ Nikon D3です。当時のフラッグシップ機となります。

Nikon D3にAi NIKKOR 45mm F2.8Pを装着した前面からの外観写真。なかなか粋である。

相方のレンズは考えうる最も小さなオールドレンズを選択。Ai NIKKOR 45mm F2.8Pです。今まではAPS-C機で換算67.5mmとして使っていましたが、元のフルサイズ画角も試してみないと勿体無いですからね!合わせて約1.5Kgの漬物石の出来上がりです。

Ai NIKKOR 45mm F2.8P作例1。春の新緑の向こうに日本家屋が映る写真。

画質が折り紙付きであることは予想通りでした。20年近く前の機材ですが今でもスッキリ写ってくれます。特にこのパンケーキレンズ、小さいのに驚くほど優秀です。電子接点もあるのでExifデータも記録できます。マニュアルフォーカスレンズですがボディ側のフォーカスエイド機能が使えるのでピント合わせも比較的楽なのが魅力。

D3 & Ai NIKKOR 45mm F2.8P作例2。晴れた日に博多駅のテラスから街並みを撮影。
黄色を抜いたつもりだけど…

D3に関しては老兵ならではの弱点もあります。その顕著な例が「黄色被り」と揶揄されるセンサー由来の色味です。確かに黄色が被った写真になりがちでした。この記事の写真は全てRAW現像で調整しているものを並べています。

D3 & Ai NIKKOR 45mm F2.8P作例3。足元に咲く名もなき花。陰影がはっきり写っている。

概ねイエローの輝度と彩度を個別で下げて調整しました。やりすぎると全体が変な感じになりますし、人間の肌が写っている状況だともっと大変です。というか連続してこの調整をしていると目がおかしな色に慣れてしまうから困ったものです。人間の目もケルビン固定できたらいいのに…。

D3 & Ai NIKKOR 45mm F2.8P作例4。高く聳え立つ木下を観光客が歩いている。

そういったネガティブな要素があっても意地になって漬物石を持ち歩くのには理由があります。やっぱりマニュアルフォーカス光学ファインダーが好きなんです。気持ちがいいんですよ。完全に自己満足ですが、今のご時世、自己満足って大事じゃないですか。フラッグシップ機のファインダーは控えめに言っても最高です。

D3 & Ai NIKKOR 45mm F2.8P作例5。キャンプした時の焚き火を撮ってみた。

この高揚感と引き換えに重さを甘受せねばなりません。この点は後述するとして、D3の欠点をもう少し加筆しましょうか。バッテリーの劣化も抜き差しならないデメリットですね。古い個体なので当然ですが劣化度MAXで満充電してもシャッター回数100回程度で事切れます。純正品のEN-EL4はもう新品では手に入りませんし、激安のサードパーティ品(Amazonリンクはこちら)は怖くて手を出していません。

D3 & Ai NIKKOR 45mm F2.8P作例6。F2.8とそんなに明るいレンズではないが被写体によるとボケ量は大きい。チューリップの写真。

あと本来は喜ぶべき官能的なシャッター音も街歩きスナップでは弱点だと感じました。あまりにも大きい音がするため人が写り込むような状況でシャッターを切る勇気が出なかったのです。私は人様に迷惑をかけるくらいなら写真を撮らない方を選びます。1ヶ月の間、何度もそんなシーンがありました。…本当は撮りたいんですけどね。でも背伸びするもんじゃありません。側から見れば不審者ですもん。

D3 & Ai NIKKOR 45mm F2.8P作例7。雨の日のキャナルシティの噴水。自撮りするサラリーマンが写っている。

漬物石を毎日持ち歩く = 通勤姿に似合わないカメラを持ち歩くこと、あまつさえ人の流れの中で足を止めて写真を撮るなんて社会生活の中では迷惑行為と紙一重でしょうから。難しいですね、撮りたい欲求と良心の呵責が鍔迫り合いする時は特に。極端な例ですが、かつて撮り方で炎上した写真家の鈴木達郎さんのことを思い出しました。

いざ自分がおっさんの年齢になった今、いつまでも「自分が!自分が!」などと言っていられません。社会の小さな歯車として生かされつつ、その傍らで写真を撮らせていただく。そんな身の収め方をしたいものです。漬物石を愛でながら思い耽った前半戦でした。なんの話だっけコレ?

やっぱり現代的なZ9。

ところが月の半ばで状況が変わります。俄かに新発売レンズのレビュー依頼が舞い込んできました。過去記事にもなっておりますPergear 25mm F1.7が到着したので急遽Z9を一日一撮に導入することになりました。

Z9にPergear 25mm F1.7を装着した前面からの外観写真。レンズはかなりコンパクト。

大好きなカメラ機材のレビュー依頼ですから、動画1本・ブログ1記事程度で終わらせるのは視聴者さんにもメーカーさんにも忍びなく、どうせやるなら死なば諸共ということでこのセットで毎日写真を撮ることにしました。ファーストインプレッションは過去記事とYouTubeでご覧頂けます。

開放F1.7とスローシャッターで撮影した交差点。止まっている車と動いている車の違いを楽しむ。
開放F1.7

ちなみに新しい月になった今でも引き続きこのセットで毎日写真を撮り続けています。最低1000カットくらい試さないと試したとは言えないでしょうからね。この記事の写真は使い始めてから10日間のものです。

Pergear 25mm F1.7をF16まで絞り込んだ写真。葉のディティールが美しく描かれている。
F16

このレンズ、絞るとマジでいい仕事します。非常に精細に写ります。絞りは1段刻みでしか動作しませんが、開放F1.7と次のF2.8はホワホワしていて、F4で襟が立って、F5.6F8は見違えるほど優秀です。明るい環境だとF16でもまだいけます。一応F22まで絞れます。

天神を行き交う人々のモノクロ写真。
F5.6

APS-Cボディを売っぱらってしまったので仕方なくZ9をDXクロップして使っていますが、幸か不幸かZ9の最新ファームウェアで搭載されたピント拡大の半押し解除機能が非常に役立っていますし、レンズ情報手動設定でレンズ名を登録できる上位モデルの特権も享受してしまった今となっては、このレンズはむしろフルサイズ用(クロップ前提)では?と疑ってやみません。

奇抜な形をした三角形の建物の入口。モノクロ写真で陰影のトーンを表現。

写真をWEB用に圧縮しているのでトーンが潰れておりますが↑こういうのはモノクロ写真を大画面で楽しむ変態紳士諸君にはきっとお気に召すプロダクトだと思います。けっこう綺麗なグラデーションが出ておりました。これで税込8999円ですから中華レンズも侮れませんね。

Pergear
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雨上がりの薔薇の花。赤い花弁に水滴がついて美しい。
F16

D3とZ9を交互に使ってみて感じたのは、Z9は圧倒的に今の時代にマッチしてるなということでした。慎ましやかなシャッター音は雑踏の中では掻き消されてしまいます。もとよりZ9は物理シャッターが非搭載ですからシャッター音といっても擬似的なものです。サイレントシャッターにすることだって出来ます。しかしそこは敢えて撮っている感覚を味わいつつ、かつ周りにも配慮できるという塩梅ですよ。なんて今っぽいんだ!

雨の博多駅。傘を刺す人々が仕事に向かっている風景。

さらに、撮る前から仕上がりが見えているミラーレスの恩恵だとか、Wi-Fiでデータ転送ができることとか、USB-Cで充電が出来ることとか、快適性を列挙しだしたらキリがありません。明らかにミラーレスの方が効率よく撮影を楽しめます。これは一眼レフの撮影体験とは別ジャンルの嗜みなのだな!と腹落ちしたのです。スポーツで例えれば野球とサッカーくらい違う感じ。比べるもんじゃありませんでした。

重さは慣れる!

そりゃ重いですよ、約1.5Kgですから。Z9の方が重心が中央に集中している感じがしてズッシリした印象です。レンズまで合わせると重量はほぼ一緒。これは苦行なのか?と問われれば…意外とそうでもないというのが強がり抜きの感想となりまして。

Z9もD3もレンズさえ小さなものを選べばスリングバッグにスポッと入るので持ち歩きしやすい。

ひとえにレンズが小さいからでしょうね。どちらもpeak designのスリングバッグ(3L)にそのままストンッと縦のまま収納できるので持ち歩きのストレスが非常に軽減されています。漬物石スナップ装備は初手でファイナルアンサーになってしまった気がします。これ以上の最適解を作り出す自信がありません。

Nikon D3とZ9にそれぞれパンケーキレンズを装着して横から眺めた時の外観写真。ほぼ同じサイズ。

人生は一度しかありませんし、自由に写真を撮り歩ける快活な時間はもっと有限でしょうから、多少無茶だとしても元気なうちに漬物石スタイルを経験しておきたかったのです。この後、買ったものの文鎮化しているD4sも控えていますのでしばらくは自分を騙しながら漬物石を持ち歩こうと思います。

自己満足以外の何者でもないが、フラッグシップ機を毎日持ち歩く喜び。

そうこうしているうちに「やっぱり小さいカメラもいいよな…」とか言ってそうですけどねぇぇ!嗚呼、全部試したいわ、人生短過ぎますよホント。アナザーカットのYouTube版は追って投稿します。では皆さん、また次の沼でお会いしましょう。

動画版もございます。

ブログ管理人:isofss(イソフス)