フィルム沼、浅くて広いと、誰曰う。

写真歴数十年の先輩に「使っていいよ」と渡されたNikonのフィルムカメラNikomat ELが私の5台目のカメラとなったのは2017年。今でも正常動作するから驚きだ。Nikonのものづくりには感服するばかりである。そしてNikomat ELをきっかけとして運命のレンズNOKTON 58mmF1.4 SL IISと出会うことになる。以後、忖度しまくっているのでNikonラブな方にお読み頂ければ幸いだ。オールドレンズに興味がある方にも是非。

1.カメラは見た目で選ぼうぞ!

Nikomat ELとMicro nikkor Auto 55mm外観

この無骨なデザインよ。オール金属ボディなのでかなり重い。が、それがいいのだ。今では考えられない品質重視なプロダクト・そんなNikonが好きだ。販売開始は1967年。ハイエンドというより普及機として販売されていたそうだ。Nikomat ELの概要に関しては別記事にまとめているので詳細はそちらで。↓↓↓

Nikomat ELとZoom nikkor Auto 80-200mm外観

一緒に借りパク(公認)しているZoom-NIKKOR.C Auto F4.5 80-200mmを装着した姿がこちら。ピントは回転方向・ズームは伸縮方向という面白い機構のレンズ。残念ながら油切れでリングはスカスカ、レンズ内にも若干クモリがある。写りもモッタリ系、たる型の歪曲収差もある。しかしどういう訳かこのレンズで撮った作例記事が当ブログで視聴数ベスト5内に鎮座してたりする。

2.フォクトレンダーを買った。

他社と一線を画すNikonの象徴はFマウントの不朽性ではなかろうか。数十年経った今でもFマウントは現役で使えるマウントだ。しかしこのメリットがレンズ設計を難しくしてきた諸刃の刃であった話も有名だ。そんなメーカーの信念のお陰で、オールドレンズ仕様のマニュアルフォーカスレンズが今でも新品でも買える。

新品で買えるオールドレンズ、NOKTON 58mmF1.4 SL IIS

NOKTON 58mm F1.4 SL IIS外観写真。美しい!

2017年にリニューアルされたコシナ製Fマウント用レンズ、フォクトレンダーNOKTON 58mmF1.4 SL IISを購入した。見てくれ!この美しいフォルム。ガラスの輝き。手に冷んやり伝わる鏡筒の質感。これだけでビール3杯おかわりできる。

NOKTON 58mm F1.4 SL IISのマウント部分。Fマウントの電子接点有り。

実はマウント部分には電子接点が設けられており、現行のFマウント一眼レフであればExifデータを写真に埋め込むことができる。特に絞り値を記録できるのは嬉しい。(マニュアルフォーカスレンズなので一眼レフ機だとピント合わせに苦労するが、ZシリーズのミラーレスカメラにFTZ経由で繋げばExifも残せてピント拡大も可能な万能レトロレンズの完成だ!)

NOKTON 58mm F1.4 SL IISをNikomat ELに装着した姿。かっこいい。
※ねじ込みレンズフードは市販のものです。

話を戻そう。↑こちらがNikomat ELにNOKTON 58mmF1.4 SL IISを装着した姿だ。レンズ側にカニの爪を装着しているのでNikomatほど古いカメラ(非Ai)であっても絞り情報をカメラ側に伝えられるのだ。歳の差40歳でも一つになれるとは…感慨深い。

3.NOKTON 58mmF1.4 SL IISモノクロ写真作例

フィルムカメラなので撮った後の画像確認は出来ない。本当に撮れているのか?露出は合っているのか?…現像に出さないと分からない。でもこのスリル感が堪らない。さて、Nikomat ELとNOKTON 58mmF1.4 SL IISの組み合わせで撮影した写真を並べてみよう。

焦点距離58mm、そこそこ寄れる。

そこそこ寄れるNOKTON 58mm F1.4 SL IIS。最短撮影距離は45cm

最短撮影距離は45cm。特筆すべき距離ではないが、58mmというちょい狭な画角が相まってそこそこ寄れているように感じる不思議なレンズ。手のひらサイズのものを「This is a 〇〇」と説明するのにはちょうどいい。

NOKTON 58mm F1.4 SL IISでカタツムリを撮ってみた。

レンズ口径もF1.4と明るいため、低感度フィルムを装填してしまった状態でも室内撮影が可能(…だがピントは非常に薄い)。なお、Nikomat ELはシャッタースピードが最速1/1000秒までしかない。屋外でも使うことを考えると、ボケ大好き人間としてはフィルム感度はISO:100で一択だった。

NOKTON 58mm F1.4 SL IISでテーブルフォト。必要にして十分の撮影距離だ。

博多スナップ、2017年。

NOKTON 58mm F1.4 SL IISでスナップ撮影。2017年夏の博多駅。

フィルムカメラで街中スナップとは洒落ているではないか!…まぁ単に「そんな俺カッコイイ病」なのだが。

夏の屋外なのでEvは15あたりだと思う。さすがに露出設定は記憶にない。ISO:100フィルムであれば1/1000秒・F5.6あたりだろうか。どうしても絞りを開けたければNDフィルターを使うしかない。

フォトヨドバシみたいな構図でNOKTON 58mm F1.4 SL IISスナップ作例。

まさか数年後にこの場所も含めて世界がこんなこと(例のパンデミック)になるなんて…誰ひとり知らない街。

NOKTON 58mmF1.4 SL IISの画角は58mm。スナップではちょっと狭い?

さて、この58mmという画角であるが、スナップで遠景を撮ると似たような写真ばっかりになる。人によっては飽きるかもしれない。決して広くなく・中望遠にすら届かない、何とも言えない画角。私はけっこう好きだ。

NOKTON 58mmF1.4 SL IISで撮る博多。こんな長蛇の列は今じゃ考えにくい。

おおお…こんなに人が密になるなんて、今では考えられない光景だ。ライブに行く客だろうか。

夜の街をNOKTON 58mmF1.4 SL IISで長秒露光。

撮影後の画像確認が出来ないフィルムカメラで長秒露光を試してみた。適が分からないので設定を変えて数枚撮った中の1枚。昔の人はこうやって体で撮影スキルを身につけていったのだから敬服する。

雨の日にNOKTON 58mmF1.4 SL IISでスナップ。描写力は申し分ない。

雨の日にもスナップ撮影してみた。カメラもレンズも(当然)防塵防滴ではないので、濡らさないように注意しつつ撮影に臨む。ものを大切に扱うことを古い機械から学ぶとは粋なものだ。

NOKTON 58mmF1.4 SL IISで遠景写真。絞れば解像かんは解像感は上がる。

曇りの日の遠景写真。現代カメラのようにパキッとは写らない。あえて言わせて頂くが描写はそれなりだ。なんだったら開放時の解像感はお世辞にも褒められない。でもそれがイイ。便利なガジェット群に囲まれる生活に疲れた時にこそ、フィルムカメラとオールドレンズでゆっくり心を休めるのもありだと思う。

NOKTON 58mmF1.4 SL IISで博多の風景を撮影。F8

いくら使ったのか?

5台目といってもカメラは借り物。レンズ購入費用も4代目売却差引でカバーできた。別売レンズフードやNDフィルター購入の履歴をまとめても今回は△31,755円バック。散財の総合計は480,086円となった。(フィルム現像代は含まず。機材費のみで計算)

4.まとめ。

このフィルムカメラNikomat ELに出会えたのでマニュアル露出やマニュアルフォーカスの楽しさを味わうことが出来た。露出やピントを自分で合わせるって面倒で楽しい。ちゃんと撮影できたかどうかがその場で分からないフィルムカメラは1枚1枚を大切に扱うことを学べるカメラだと思う。その後の写真人生に大きな影響を与えた1台だった。ちなみにNikomat ELは今でも所有している。ボディは中古市場でもチラホラ見かけるので、遊びで使う分には買って損はないだろう。

レンズの方は良くも悪くも伝説の1本だった。NOKTON 58mmF1.4 SL IISの質感に惚れたが最後、以後、ガジェットの見た目と質感に執着する体になったのは良かったのか悪かったのか?沼の深みにハマった1本になったのは間違いない。(これは、あくまで見た目の話。NOKTONの描写性能は度外視です。)

昨今、コスパの良いマニュアル中華レンズが勢力を拡大しているように思えるのだが、質感に限って言えばコシナのプロダクトは非の打ち所がなく、たとえ値段が張ってもフォクトレンダーを使いたくなるのは原体験がフォクトレンダーだったからだ。それを立証するべく今はより高額なフォクトレンダーを使っている。悔いはない。なので質を求める人は一刻も早くコシナ沼にダイブしよう!安物に満足できなくなるデメリット付きだが。

こうして私のカメラ沼は幕を下ろすことになりま………せんでした!当然の帰結。

フィルム写真の味をしめた人間が次に向かうメーカーは〇〇ですよねぇ…ふふふ。ということで次回に続きます。この沼シリーズは「沼の歴史タグ」から全話お読み頂けます。今日も最後までお付き合い賜り誠にありがとうございました。では諸君、良きカメラ沼LIFEを。かしこ。

ブログ管理人:isofss(イソフス)